「テレプシコーラ」



友達から借りました。ありがとう。
この漫画家さんの作品は、母と娘の関係が前面に出された作品が多いように思います。
で、その母と娘の関係というのがちっとも心が温まるものではなく、
支配的であったり、対立していたりと殺伐としている雰囲気が強く印象に残っています。
この作品では、バレエ教室を営む母と将来有望な姉・千花としてその関係が綴られていて、
表面上はそう見えないのですが(少なくとも千花は自身の意思で行動していると思っているし、
周囲もそれを疑ってないけど、悩んで自分で決めるという機会がない)
少しずつその構造が食い込んで行く様がさり気なく普通の一コマとして描かれていて、
またそれが露になって行く展開も淡々と進んで行くので、底冷えするような怖さがありました。
こういう母娘の支配構造というのはかなり使い古されていると思うのですが、
敢えて何気ない淡白な展開で示すことで独特の怖さ、興味深さがあると思いますね。
で、妹の六花(ゆき)はというと、既に最初の段階からこの構造から外れていて
(むしろ外されたという感じですが)
自身の成長が肉親ではなく他者に委ねられているというのがとても面白かったですね。
これは「運」のお話でもあるのですが、才能としての運ではなくて生き延びる為の運、
未熟な者が適切な保護者や指導者に出会えるかどうか、という事を描いているような気がします。
それが必ずしも肉親ではない、肉親である必要がないという展開が興味深かったですね。
ていうか、金子先生はこんなに他人の事情に首突っ込んで、自分の彼氏とかほっといていいのか
という気がしますが(笑)
悲しいストーリーではありますが、バレエの奥深さや人間関係が(子どもにも嫉妬や後ろめたい気持ちはあるよなあ)
とても面白い漫画でした。