「バイオメガ」

BIOMEGA 6 (ヤングジャンプコミックス)

BIOMEGA 6 (ヤングジャンプコミックス)



ネタバレがあります。






「ブラム学園!アンドソーオン」の解説の中で本田透さん*1は、「BLAME!」を「人類がテクノロジーの進化暴走によって文字通り「喪」のどん底に叩き落とされた世界」と表現していて、上手く言い当てるなあと、思っていました。で、その後に発表されたこの「バイオメガ」はテクノロジーをどのように扱ったのかをちょっと考えてみました。
今回メインになっているテクノロジーは「不老不死」です。ストーリーの前半では、不老不死化を認めず地球を変態させようとするDRF率いるニアルディ派と、前総主の意思を受け継ぎ人類の不老不死化を押し進めるナレイン派(公衆衛生局)、人類を危険に晒す両方から人類を守ろうとする東亜重工派の3つが対立しているという構図です。東亜重工チームがDRFの陰謀を暴いて行く、というストーリーで黒幕がニアルディに設定されているように感じました。ニアルディの意図は不老不死化に反対し地球の環境を高次のものに変えようとすることなんですが、こうして書いてみると不老不死化を推進するナレインよりも、手段はどうあれ常識的な考えだと気づいて驚かされます。東亜重工も図らずもナレインに協力する形となっているし、物語は不老不死化に賛成なんですよね。でも結局、一部の例外を除いて、人類全体の不老不死化は実現しません。その代わり、意図しない、いろいろな副産物を生むんですね。それが後半の復物主世界だと思いました。技術とは、「目的に向かって何かを変えること」だと思うのですが、「この「予想しない結果」というのは、技術の負の面を示していると思いました。この漫画は「人類が予想しないテクノロジーの結果に乱暴に振り回される物語」だと思います。
別の面から感想をもう一つ。この物語の発端はレーフとリルオードの関係にあると思うんですね。レーフはリルオードと同じ不死者になって、彼女を火星に迎えに行きたかっただけなんでしょう。リルオードが何故レーフと別れて火星に行ったのかという説明はされていませんが、火星で見つかった虫(胚珠)に呼ばれたんでしょうか。この二人の関係が形を変えて、ニアルディとナレインに受け継がれているように思いました。ニアルディはリルオードが出した種子の望みを叶えたいだけなんだろうし、ナレインはレーフの個人的な理由で作ったと思われる計画(人類総改換計画)を実行しようとしているだけのように思います。そうすると恐ろしく歪んだ表現の恋愛物語にも思えます。それと東亜重工が開発した合成人間も不老不死化に繋がる技術だし(ナレインもこの東亜重工社製合成人間に転写したし)、もしかしたら東亜重工の開発者にも、この二人に繋がる人物が居たのかもしれません。
この漫画の一番の魅力は、ページをめくる指先が真っ黒になるほど*2圧縮された一コマ一コマにあると思います。2巻の#12、一コマ目にさりげなく「出口まで10000m」と書かれたEXITプレートが妙にツボにはまりました。出口にたどり着けないって。このむちゃくちゃな距離感覚や、都市構造物の偏執狂的な描き込みは、ストーリー以上に面白くて、ときどきそこで止まってじっくり鑑賞してしまいます。また、ネーミングセンスがとても想像をかき立てて、例えば造一の持つ武器は、威力を抑えて発砲することを「マナーモード」というんですね。現在使われている「マナーモード」という言葉が形骸化して、新たな意味を肉付けされた、その背景が透けて見えるような感覚がすごく楽しいです。あと「ヒュジョウト」という言葉にも似たような面白さを感じました。
6巻で完結しましたが、もうちょっと続けて読みたい漫画でした。

*1:すいません、著作を読んだ事がありません。。。

*2:表紙に警告アイコンがあります。