コンティジョン

メモていどに感想。原因不明の感染症が全世界に拡大していくパンデミックを描いた作品。

物語の主題は、予防も治療方法も分からない感染症そのものではなく、そんな恐ろしい病気の蔓延によるパニックと、それが引き起こす情報不全を描いているんじゃないかなと思いました。特に注目したのは、ジュード・ロウ演じるフリーの記者。彼はウェブサイトに、根拠が不明な物質が病気に有効だと記載したり、政府はすでに特効薬を開発していて、製薬会社との癒着で公表していない、など、ほとんどデマに近いものをどんどんアップしていくんですね。でも一方で、真実を突いていたり、フィールドワークを地道にこなす彼の取材は恐らく最も現状に近いものを報じていた。なにが真実でなにが嘘なのか、ということは厳密には定義することができません。ただ出来るのは、なにが明らかでなにが隠されているか、ということだけなんじゃないかな。でも明らかな事実があるからと言って、人はそれに基づいて冷静な判断を下せるかというと実は違うんですよね。

普段は意識することのない、情報が容易に手に入らない状況、人のいのちと経済の重みが底辺でぶつかり合う理不尽さ、そして生存を脅かすウィルスに対する人々の振る舞いもまた、どこか顕微鏡で覗いたような、人間の強い意志というものがとても希薄に感じられる、そんな映画でした。

カメラワークが特徴的で、この監督ってチェ・ゲバラの伝記もの撮った人だよね。あの映画もこの作品もあんまり人物に肉薄しないで、中遠距離からのショットが印象的でした。なんだろう、人間というよりもヒトを撮ってるみたいな。

あと最初の被害者の夫を演じた、マット・デイモンが良かったです。人類の危機の外に置かれて、家庭の危機に一人で向き合わなければならない、そんなある意味壮絶な状況の中で、誠実にあろうとした姿が印象的でしたね。