Beyond : Two Souls


あらすじ
物心ついた時から、見えないけれどその存在を確かに感じる「エイデン」と共に生きてきたジョディ。身の回りで起こる不可解な現象に怯えた両親に見放され、ジョディは幼くして心霊現象を研究するネイサン・ドーキンス教授の元で暮らした。ジョディがエイデンを介して理解しているあの世を、ドーキンス教授は「インフラワールド」と名付けて原理を解明しようとしていた。ドーキンス教授の研究成果はこの世のものではない者たちがこちらの世界へ干渉する「コンデンサー」という機械を生み出すが、この世界の法則とは別の次元の「力」を制御するということにジョディは疑問を持つ。そんなある日、ジョディはドーキンス教授の保護下を離れてCIAに招集される。そこで彼女は過酷な運命に出会いながらも、深い絆で結ばれているエイデンと共に必死に生き延びようとする。


ゲームについて


ハリウッド女優のエレン・ペイジが、全面的なモデリングやフェイシャルモーションによって3Dで再現されたキャラクターとして主演しています。第一印象はちょっとこれは別物かなあという感じでした。3D造形じたいは実写の俳優さん自身にすごくよく似ているんですが、ゲーム内のキャラクターに合わせた調整はかかっていると思うんですよね。特に目の印象は全然違いました。エレン・ペイジは「インセプション」(あー他の映画もちゃんと観ておけば良かった…)での演技を観ていますが、そんなに目が印象的な役者ではなくどちらかというと仕草や台詞が自然で、それでいてきちんと印象に残すような役者かなと思うんですが、このゲームではかなり目元の演技が効いていました。たまたまそういう映画を観ていないだけなのかもしれないけど。幼い頃から理解されることがなかったジョディの深い孤独を、言葉ではなく寂しそうな目の印象だけで表現しているんですよね。特に初めて同年代の子供たちのホームパーティに招かれ、散々な結果に終わった(私の選択では惨めに終わったんですが)あとのじっと壁の向こうを見つめる目とか。映画でもこういう演技で表現することはありますが、このゲーム内ではかなり多く「表情で見せる」という部分に費やしていたと思います。そういう表情で一番良かったのはネイサン・ドーキンスを演じたウィレム・デフォーでした。ジョディはプレイヤーが操作するキャラクターなので実はあんまりよく表情が見えないんですよね。操作中のカメラはきちんとジョディをとらえていたし、エイデンのアングルに移行すればちゃんと見えるんですが初見だとどうしても操作に気を取られました(笑)そういう意味で一番ちゃんと表情を観ていたのは、ネイサンでしたね。あの吹き替えの声優さんの声もすごく良く合っていて(ジョディもすごく良かった)、彼のジョディに対する愛情や苦悩が、顔に刻まれた皺やちょっとした目元の知的な雰囲気(こういう細かいところまで拾える技術すごい)でよく現れていて、ネイサン・ドーキンスという一人の人間を確かにそこに存在させていたと思います。こういう感覚はもう映画と同じですね。


数値化されたパラメーターによってキャラクターの特徴を表現する古典的なRPGではなく、動作を選択することでキャラクターの特徴をプレイヤーが決めていく、そういうゲームだと思いました。役割をプレイヤーが考えて演じる、という意味でのRPGですね。私の場合は恋愛に奥手で、一人(エイデンもいるけど)でなんとか生きていこうとするジョディになりました。むむ、プレイヤーを反映している…。ある程度傾向は限られるだろうけど(攻撃的なジョディとか)プレイヤーの数だけ物語があります。これが映画ではできないゲームのすごく好きなところで、物語がすごく近くにある感じがするんですよね。確かに映画を観ながら登場人物のエピソードに思わず自分の身上を重ねたりすることはあるけど、基本的に映画は少し離れて観ていますね。でもゲームだとそのキャラクターがどうなるかは自分の操作によって変わってくるので、やっぱり身近に感じてしまうんだと思います。そういう操作によってプレイヤー側に積み上げられる物語と、ゲーム内で語られる物語がうまくリンクした!と言いたいところですが、今回はそこまでは残念ながら感じられませんでした。うーん、ゲームの中のストーリーは本当に起伏に富んでいてドラマチックな展開ばかりで、そんななかをジョディが頑張るのはすごく感動したんだけどなにかもう一歩、物語の中の「ジョディ」と操作キャラクターの「ジョディ」とがぴったり重なる瞬間がなかったんですよね。すごく近い、とは思ったけどぴったり!とは思わなかった。前作「Heavy Rain」はゲームシステムはほとんど同じで、複数のキャラクターを切り替えるタイプだったのですが、一人のキャラクターを操作するよりなぜか複数の方がしっくりするところが多かったです。たぶん、一人称の小説に感情移入するのと三人称とでは移入のレベルが違うように、私には三人称の距離がちょうどいいのかもしれません。でも私の選択や操作によって、目の前で物語が紡がれて行くダイナミズムはやっぱりすごく楽しかったですね。


ジョディとネイサンはストーリー上深刻な展開が多く、あまり和むシーンが少ないのですがそんな中でネイサンの助手のコールがすごく好きでした。ジョディのことを「プリンセス」って呼ぶコールがずいぶん年の離れた兄みたいで、かわいい妹のことをいつも気にしている彼がなんだかすごく良かったです。普段は研究職で体力自慢でもないのに最後はかなり頑張ったしね!


シナリオについて

ネタバレます









ジョディの人生のいくつかのエピソードを時系列をばらばらに提示しながら描いていく方法(クリア後は時系列ごとにプレイ可能?)は、映画「(500)日のサマー」みたいに観る側に前後関係を想像させる余地があって楽しかったです。でもこれはあまりゲーム的な特徴ではないかな。
その中でも良かったものをいくつか。

暴走状態に陥ったあの世の入り口を開く機械「コンデンサー」をジョディが単身(with エイデン)止めに行く、というエピソード。かなりホラー色が強くて悪霊に殺された研究所員がゾンビみたいに立ち上がって来たり、死者の記憶を覗いて残酷な死の瞬間を見なきゃいけなかったりと、かなりびっくり戦きながら進めました。基本こわがりだけど、…ま、まあこのくらいなら大丈夫かな。エイデンがかなり活躍するエピソードでもあって、エイデン視点が3D的にかなり酔いやすいのでそっちもけっこう辛かったです。でも最後のコンデンサーの爆発に巻き込まれた後、エイデンを見失ったジョディのシーンはすごくよかったです。

  • (タイトル忘れ:ジョディが同年代の子供たちのホームパティに招かれるやつ)

幼い頃から特殊な能力のために友だちを作れなかったジョディを思いやってネイサンが同僚の子供たちとジョディを引き合わせる、というこれだけで嫌な予感が漂ってくるエピソード(笑)あーなんかやだなー、絶対この子たちとジョディは住む世界違うよなーと思いつつ、最後は映画「キャリー」のようになってしまう展開に「あーやっぱりなー」と思ってしまいました。あ、でも復讐はしなかったからキャリーではないけれど。この子供たちの反感を買うきっかけになったのが、ネイサンが用意してくれた古い詩集だというのがなんとも皮肉で、ネイサンなんでそれにした、ゲーム機とかにしておけばいいのにと思いました。子供たちと別れた後のジョディの顔がなんとも哀しげで切なかった。

  • ナバホ

砂漠の真ん中にぽつんと立つ農場に住むナバホ族の家族と遭遇する物語。楽しく夕食を採っていたのに風が出てきたと思ったら急に皆暗くなって寝室に引きこもったり、ジョディの後ろに古代人めいた衣装の人物がふっと現れたり、よそ者のジョディには話してくれない秘密があったりと、オカルトテイストがXファイルのようですごく楽しかったです。最初はつっけんどんだった兄弟の兄の方が、徐々にジョディと仲良くなっていくほのかなロマンスもあったりしてよかった。でも私は弟の方が好きだけど。この事件をきっかけにジョディが自分のするべきことに目覚める、全体のストーリーでもかなり重要なポイントでもあるんですよね。

  • (タイトル忘れ:寒い国に潜入&脱出)

まるで某ステルスアクションのような、いや今さら隠すまでもなく「これはメタルギアだ!」と思いながら楽しんだエピソード。短い中にも潜入、拷問(笑)、爆発、脱出ときちんとアクション映画のプロットを詰め込みながら、コメディ要素もちゃんと入っていて面白かったです。これまでエイデンがチートっぽい(ずるができる)ポジションで、エイデンがいたらだいたい大丈夫じゃないの?という油断が生まれた頃にエイデンが居なくなるという危機感の演出も見事でした。死ぬかと思ったー。



ジョディの本当のお母さんとの出会いや、ネイサンに降りかかる悲劇、そしてそれが結局はネイサンを間違った方向へと導いてしまう選択のなさなど、このキャラクター造形でなければ描ききれない物語でした。その困難にも立ち向かおうとするジョディと、そして彼女を支えるエイデンがすごく輝いて見えましたね。面白かったです。