攻殻機動隊 ARISE Border:2 Ghost Whispers


劇場公開をすっかり見逃してしまってレンタルで観ました。


後に公安9課のメンバーとなる面々が二手に分かれて対立するという今回の構図はなかなか面白かったです。バトーさんがきりっと指揮してるところなんてあんまり観たことなかったなあ。なによりサイトーさんが今回は面白かったですね。あんなちゃらちゃらしたギャンブル狂いが後にあんなかっこいい人になるのか、その辺は分からないけど、報酬次第でどっちにでもつくっていうのはまあある意味プロフェッショナルですよね。そういう意味ではバトーさんはあんまり変わらずちょっと感傷的なところが残ってて良かったですね。サイトーさんはなによりそれに見合うスキルをちゃんと持ってるところは変わってないしね。この人の衛星とリンクして同期するっていう機能がすごくかっこよくてすきなんですよね。
一方、素子は今回はアクションは少なめ…でもなかったか。電脳空間に居るシーンの方が印象的でしたね。今回登場した女性キャラのヴィヴィーと共に電脳空間内にいるシーンがちょっと艶っぽくて良かった。まあネタバレになるけどあの時のヴィヴィーの視線は全然違う含みがあったわけですけども。
同じく今作の登場キャラ、ソガがおっさん好きには素敵なキャラクターでした。いやーこのアニメのなにがいいかってこういうかっこいいおっさんがいっぱい出てくるところなんだよね。ふふふ。昔の日本映画に出ていた俳優さんのような顔立ちとか、妙に背筋がぴっと伸びている凛々しい立ち姿とかすごく素敵でした。こういうキャラクターと素子のような美形のキャラクターが違和感なく同じフレームに収まっているのってすごいな。
次回はようやくトグサさんが登場かな。なんだか恋愛ものっぽいので楽しみ!


ストーリーについて

!!! 以下ネタバレ !!!








前回に続き今作も「記憶」がひとつのテーマでした。最初の劇場版やテレビシリーズ版にもあるように、電脳化によって記憶の改竄の頻度が跳ね上がってしまった世界でどう記憶と向き合っていけばいいのか、記憶と結びつく自己をどう編纂していけばいいのか、というテーマが基底に置かれていると思います。そして今回は操作可能となった記憶がガジェット(電子的な小物)のように扱われる、記憶の外部化からさらに進化して、記憶のガジェット化という話だったのではないかと思います。まあiPhoneを操作するように容易に記憶は書き変わらないけど。諜報の一つの小道具としての、ねつ造された記憶なんですね。
一方で、後半ヴィヴィーが人工知能であることが明らかにされます。そして彼女は生まれた時から生体を持ったことがない素子に興味を持ち、接近するんですね。彼女の目的は、ゴーストと呼ばれる自意識の中核にある「なにか」、人間の脳にしか発生しない(と思われる)人間たらしめている「なにか」です。
改竄が可能になった記憶はゴーストを揺るがします。その境界を曖昧にして整合性を崩します。一方でヴィヴィーに発生したものはゴーストなのかというとなんとも言えません。ただ機械のなかに積み上げられた一連の記憶に、ある法則が発生していたのかもしれません。ノイズのような記憶の連結の中に意味を見いだすような。人間が記憶と自己との間にずれを発生させる一方、機械には記憶の連携の中に意識に似たようなものが発生しつつある。そういう両面からゴーストというものを描いているんじゃないかな、と思いますね。そういう境界でしか観測されないものなのかも。