天動のシンギュラリティ

天動のシンギュラリティ(1) (ファミ通クリアコミックス)

天動のシンギュラリティ(1) (ファミ通クリアコミックス)


人間とロボット(hIE: ヒューマノイドインターフェイス・エレメンツ)のボーイミーツガールを描いたSF小説BEATLESS」作者、長谷敏司さん監修の同じ世界観を共有する漫画です。
BEATLESS」をちょっと説明すると、人間の知能を遥かに凌駕する超高度AIが数十体存在し、それらが人間世界とは異なる次元で生存競争を繰り広げつつ、人間との共生あるいは敵対を選択する、という物語です。超高度AIが存在するほどの技術と現在の地続きのような社会風景が見事に融合した「BEATLESS」は、他にも様々なガジェットやアイデアなども含めてとても魅力的なビジョンを見せてくれました。
その同じ世界観で描かれる漫画と言うことと、巻末に長谷さんの新作短編小説も載っていると聞いてちょっと読んでみました。まだ一巻目なんですね。


えーと。初っぱなから厨二病全開で驚きました(笑)だいじょうぶなのか、私もうそんなに若くないよ、と思いつつ、主人公がどう見てもテクノロジーの粋を集めた力を行使していながら、魔法魔法と連呼するのに眉をひそめつつ読みましたが、んーけっこう面白かったです。
この漫画に登場する街は壁面だけでなくあらゆるところにプロジェクションマッピング(?)され、立体ホログラムで仮想的なモノで埋め尽くされた実験都市です。ここがSF的にちょっと面白いところで、実際の地形と装飾された地形に齟齬が出ているんですね。それを主人公たちは「ほころび」と呼んでいます。この街の中に認識できない部分が存在する、というのはチャイナ・ミエヴィルの「都市と都市」みたいだなあと思ったんですよね。「都市と都市」という小説は、二つの異なる国家がモザイク状に存在する場所で起こる殺人事件を追ううちに、その隙間に存在する街の存在に近づく、というちょっと変わった物語です。この「都市と都市」の中では異なる国家間の住人たちはお互いに認識しないように幼い頃から訓練している、とあるのですが、それって自力で無視しなくてもARとかで解決できるんじゃないかなあと、読みながら思ってたんですよ。そう、まさにこの漫画の都市は「都市と都市」をアップグレードしたような街なんですよね。



ちなみにhIE(ロボット)は自律機構がクラウド上にあり、現在のシンクライアントPC(サーバーと常時接続することで処理をサーバーに依存している低スペックPC)のような感じですね。この部分は「BEATLESS」の設定と同じだったと思います。そして主人公たちはどうやらその行動管理クラウドへのアクセス権を持っているようですが…。彼らが、というか全力厨二少年の主人公カイトがなにを目論んでいるのかは謎ですが、なにかちょっと面白そうなことをやらかしそうで今後が楽しみです。


キャラクターについて。主人公が残念系イケメンらしいのですが、イケメンなのか…。ちょっとよく分からないけど、目を見開く時に「クワッ」って音がするところがすきです。(そこか)うーんやっぱり、いまいちピンと来ないな…。

短編小説「10万人のテリー」

ちょっと分かりにくいところもあったんですが(オーバーマンのくだり)、短い中にちゃんと人類の危機が盛り込まれていて面白かったです。しかしこういう一見無茶な設定なのに妙に説得力のあるストーリーに落とせるの、ほんとすごいわ。
もしかしてこの短編も漫画の方に関わってくる、のかなーと思いつつ次巻を楽しみに待ちたいと思います。


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