単語一つで面白い表現になるねっていうこと


今日は肉の話をします。
…そういや「肉」って字、ブロックのようなものに人が埋まってるように見えますね。なんていうか、ロードランナー的な。


肉です。にく。というものの、肉より魚の方が好きですけどね。なんで肉の話なんかしようと思ったかというと、古い翻訳の本を読んでいるとごく稀にこんな表現に出くわすからです。
「すてきな肉ね」
これ、別に筋肉を褒めてるわけじゃなく(それにしたってこの言い方はない)食事のシーンなんかで出てくるのです。ていうか、前に何かで読んだんだよね。たぶんSFだと思うけど。


それが先日、「白鯨」を読んでいたら出くわしたのです。
角川文庫「白鯨」(下)第百一章にこんな記述がありました。
「牛肉はすてきだった」
すてきなにく。食肉を褒めるのに使われる語彙なら、柔らかいとかジューシーとかとろけそうとか、肉汁の大洪水や〜とかあると思うんですが、「すてき」という表現。なんだか食べたらこっちまで素敵になりそう。きらきらしそう。きらきらというか、オイリー肌なので油っぽい食事の後はお肌がギラギラしますけどね。


ちょっと原文を探してみたけど見つかりませんでした。この「すてき」にかかる単語は、恐らく「nice」じゃないかなーと思うんですよね。現代の訳にしたら「おいしそうな肉ね」とか「牛肉はうまかった」とかになると思うんですが、この「白鯨」の初版発行は昭和31年、西暦1956年だそうです。いや当時でも普通に「おいしい」とか言ってたんじゃないかな。それでも「すてき」という単語を選択するセンスがなんだか面白くて、それだけで全然違う食文化のように思えて不思議です。


すてきなにく。見てるだけでうっとりしそう。食べてもうっとりしそう。今度お高い肉を食べる機会があったらちょっと思い出してみたいと思います。「あ、すてきな肉だわ」って。


2015/11/3 追記:
原文ありました。「白鯨」だからwhite whaleで調べたけど、これは日本語版タイトルで原題はMoby Dickなんですね。で、「牛肉はすてきだった」の原文ですが、「The beef was fine.」でした。うおおお、fineかーい!って思わず叫んだわ…。英語って難しいですね。あいむふぁいん、さんきゅー。


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