メタルギア ソリッド ファントムペイン

ゲーム「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」のノベライズです。メタルギアサーガ、最後の作品の著者はもちろん野島一人さん。ノベライズはこれで終わり?なのかな。でもここまで展開と構成が巧みな書き手はそうそう居ないし、オリジナルもちょっと読んでみたい気もします。


さて。ゲームでは映画のように一本の長いストーリーを追って行くのではなく、テレビドラマのように毎回短いエピソードを重ねて全体を描く、という方法をとっていました。が、これをきっちりと一本の物語に詰め込んでいるんですよ。いやーすごいわ。読みながら「ああ、これあのミッションの!」と思い出してました。ミッションがけっこうたくさんあるのに、それがぶつ切りにならずに滑らかに一つの物語を紡いでいるんですよね。ゲームはゲームで楽しんだけど、小説でこうしてまとまってると「あの時のあれがこれかー」みたいに、全体の流れがうまくイメージできる感じですね。ゲームではカセットテーブで説明されていた言語に関することや白鯨のいろいろもちゃんと補足してあって読み応えがありました。


もしかしたら勘違いかもしれないけど、ゲーム中ちょっと怖かったあのミッションを描いた中に、

突き当たりに扉。その手前の壁にも扉があるが、それは表示によればトイレと簡易シャワー室への入り口だった。

これってP.T?(笑)


以下はゲーム本編も含めてネタバレです。








小説ではゲームに登場しないレナード、という人物がマザーベースの主要なメンバーとして活躍します。が、思ったよりもオリジナルからの逸脱は少なかったですね。彼が行動したり、発言をするのはストーリーのバックグラウンドを補強するためだったり、他のキャラクター達の空隙にさりげなく入っていたりと、実に上手く空気のように立ち回っています。なので、途中まで彼はスネークの想像の産物なんじゃないかと思ってたくらい(笑)ゲームでもパスの幻影がスネークの前にだけ現れて、「平和を望む」という心的な役割の一部を担っていたように。まあそうではなかったんですけどね。彼は空気のような存在、というかキャラクター達をそれとなく結びつける「空」そのものなのかも。この物語は「空(サイファー)」という組織(というかその下部組織)に復讐する、というものなんですが、このサイファーというのがなかなか実体のつかめない、想像のしにくいものでもあります。それを味方側の組織にそれとなく組み込んで見せているのかもしれません。レナードは別にスパイじゃないんだけど、どんな組織にも構造的に発生しうる隙間とか、そういうものを体現しているんじゃないかな。