プロローグ

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作家、円城塔さんの「私小説」、だそうです。
えーと。私小説ってさ、「私」のことを書くものだと思うんですよね。書き手の個人の経歴とか、出来事に対する所感とかを物語の形式で描くもの。まあ分かってました。そりゃいろいろ著作を読んできたもの、この人が生半な着想で私小説を書くわけがないって。
たぶん、面白かったです。たぶん(笑)
この作品と対になるかたちで「エピローグ」という作品があるんだけど、それのメイキングのようなかたちなのかな。と、大森望さんの対談で読んだ気がする。
メイキング。確かに。円城塔流、小説の書き方とでもいうのかな。なんだか誰にも真似できないような気がするけど。まず「小説」というものの捉え方がちょっと違うんですよね。普通の小説を定義するなら「一人の作家が改変不可能な形式で出力される文字列のこと」だけど、彼にしてみれば「オープンソースのソフトウェアのように複数の人間によって改変される文字列のこと」。アメコミってあまり詳しくないけど、複数の作家がキャラクターを描ていて、日本の漫画のように漫画家が主体ではなくて作品(キャラクター)が主体だったと思うんだけど、それに似ている感じなのかも。でもちょっと考えると、小説って作家によっては様々だろうけど、素人から見ると個性の表現の一つとか、オリジナリティとかあると思うんですよ。みんなで小説を書き出したら、どこに自分の個性というものを埋め込んだら良いのかな。と、そんな風にも思うのですが、既存のテキストは死んだように変化しない、時間(時代)に置いてかれてしまうけど、生きている人間の手で変化し続けることで未来に生き残る方が良い(意訳)と言うんですよね。なんだかもう、「小説」の前提からして違ってて面白いんですよね。
あとはちょこちょこ地元ネタが入っていたり(河南駅前大深度地下歩行空間って字面がいい)、ゆるふわな会話のやりとりだったりが良かったです。でもこれを読んでも円城塔の仕様は(ある程度)分かっても、人となりがまったく分からないってのがすごいよね(笑)


ちなみに私はこの文字列をSublime Text2で書いてます。コード用だし日本語向きのエディタじゃないけど。