言壺

言壺

言壺

言葉についてのSF、言語SF小説でややこしいのは、言語というものを語るのもまた言語だっていうこと。言語が現実を侵食する物語である本作は、読むとなんだかちょっと現実がおかしく見える。言語が現実を侵食する物語(言語)を読むということが、そのまま読み手の現実へと言語を通して侵食してくるから。と言ってもメタフィクション、というものとはちょっと違っていて。現実というものが言葉に当てはめられた物事の総称だとすれば、言葉を制するものが現実を制することになるのだけれどそういうお話じゃない。言語の氾濫、人間の意識に寄生する言葉が、人間の外に出て統制を失うということ。
言葉というのは自然に使っているように思っているけど、ふとした瞬間に使われている、何かに言わされている時ってありますよね。口が滑ってしまった、とか。別に言葉を擬人化しようとは思わないけど、道具としてはなかなか高度な道具です。そういう言葉はいつまで人間の道具でいてくれるのか、人間は言葉を使う以外にも伝達手段はあるけれど一番頼りにしているのは言葉だと思うんですよね。言葉かあ、としみじみ思う作品でした。