ニルヤの島

SF作家の柴田勝家さんのデビュー作です。なんだか武将の名前の作家さんなので、登場人物たちが「天下統一!」とかぎゃーぎゃー騒ぐ群雄割拠なお話ぽいのかなあ、と勝手に想像していましたがただの妄想です。全然違います。


読んだ印象はとても落ち着いていて、淡々とした語り口だけどところどころ「あれっ?」と思わせる巧妙な構成が楽しい作品でした。少しずつ違うイメージを折り重ねていく手法は、宮内悠介さんの作品にも近いかなあ。
主なテーマは「不死と死後の世界」とわりと重めですが、主な登場人物の来歴を追っていく展開がなかなか面白くて読ませるのでそれほどずしっとくる感じはなかったですね。

不死であるなら、もう死後の世界など必要ないはずです。でもなぜか人はそれを想像する。自分の物語が終わってしまった後のことを。
なんでしょう、終わりのない物語が実現可能であることと、物語の終わりを想像することが両立しない。だって物語はいつかは終わってしまうものだから。終わりのない人生を、人間のこれまでの文化は想像することができなかったし、そこにはなにか新しい概念が必要なのかなあ、と思います。