ウィンド・リバー

見て来ました。
アメリカの辺境、ウィンドリバー保留地で起こる殺人事件。被害者はネイティブ・アメリカンの女性たち。FBIの捜査官と現地のハンターがその真相に立ち向かう。という物語。

この映画を観るにあたって予備知識はあんまりなかったんだけど、この「保留地」というのが複雑な自治領だというのはなんとなく。まあ詳しくはwikiでも読むと分かるんだけど。

インディアン居留地 - Wikipedia

アメリカ国内にあって法治が行き届かない場所。それにこの保留地という土地はかつて祖先が暮らして来た場所から遠く離れた場所なのだそうです。映画の中でも一人のネイティブ・アメリカンの男性が自分の文化の正しい知識を継承できなかったと説明するシーンがあって、土地だけでなく独自の文化からも切り離され人目のつかないところに押しやられた人々なんですよね。
さらにこのウィンドリバーという場所は人間が生きるにはなかなかに厳しい自然環境でもあります。冬の終わりであんな猛烈な吹雪とか氷点下とか、冬場の厳しさを知ってる身としてもなかなかに辛い場所だなあと思うんですよね。


誰も気にかけない、誰も見てくれない。そういう場所で起こる陰惨な殺人事件。もう状況だけで嫌な感じがしていて、さらに調査が進むにつれてどんどん見たくない事実が明らかになっていくわけです。誰も見てくれないのは、それは見たくない暗部だから。
でもこの映画に登場する二人の父親は、その暗部を直視するんですよね。事件の当事者として胸が張り裂けそうな真実に、静かに立ち向かっていく。それがすごく頼もしいというか、私にとっては正しい父性だと思うんですよ。さらにこの映画の良いところは、死を悼む役割と復讐を遂げる役割を分けたこと。これを二人に分けたことによって、互いの想いが引き立つんですよね。死を悼みながらも冷静に犯人を狩るハンターと、復讐を願いながらも喪に服す父親と。


彼らが痛みを引き受けてくれたその背中から、そっと真実を垣間見るようなそういう映画でした。