流れよわが涙、と警官は言った

流れよわが涙、と警官は言った

流れよわが涙、と警官は言った


PKDの作品が好きでよく読むんだけど男女の不和から始まる物語多い気がする。で、この作品もそう。最近読んだのだと「去年を待ちながら」が離婚係争中の男女が主軸でちょっと、うへえとなってしまったんだけどこちらはそうでもないかな。ショウビズ界のスター、ジェイスン・タヴァナーはある日「自分が存在しない世界」に迷い込んでしまう、というお話。PKDお得意のアイデンティティの危機を交えながら、セクシーおじさん(笑)ジェイスンと女性たちとの関係が軽やかでわりとするっと読んじゃいました。自分がいない世界を金とモテの力で渡っていくおじさんかっこいい。
ジェイスンを追う「警官」ことバックマンと妹のアリスとのエピソードも面白くて、このあたりがお話の核心なんだろうな。自分がいる現実といない現実、二つの現実の境目をふらふらするジェイスンを識別する(identifiy)バックマンは、観測者のような役割なのかも。