死者の代弁者

死者の代弁者〔新訳版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

死者の代弁者〔新訳版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

死者の代弁者〔新訳版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

死者の代弁者〔新訳版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)


オーソン・スコット・カード作品「エンダーのゲーム」の続編です。対話不能なエイリアンをゲームのように殲滅した、天才少年エンダーはその「ゲーム」によって負ってしまった罪を償うため永い時間をかけて惑星を渡り歩いていた。その最終目的地となった惑星でのお話です。
冒頭から巻き起こる、不可解な殺人と惑星の先住民「ピギー」の謎に包まれた生態がうまいことお話をドライブしていて、最初はゆっくり読んでたのに上巻の中盤からは一気読みでした。一章ごとに「エンダァァァァ!」って叫んだ(心の中で)まあそんなくだらないことはいいとして。
言葉は通じるけれど理解が難しい異星人とのコミュニケーションという軸と無知故に犯してしまった罪の償いという軸が絡む構成は前作を踏襲しつつ、今回は贖罪のその先へとぐっと踏み込んでいるんですよね。その痛みを伴うけれど、きっとその行動は正しいんだという想いがすごく切実で良かったです。
それに成長したエンダーの代弁者としての行動が次々と人々の意識を変えていくのもいいんですよね。死者の本当の姿を広く知らしめる、死者の代弁者は一つの視点でしか物事を見られない人々が誤って罪を犯さないように、多角的な視野を啓蒙する役割がある。その真実はとても辛いけど、その先を知って良かったという救いが印象的でした。
そういえば少年とエンダーが楽しそうにゲームをするシーンがあったんだけど、少年はエンダーの正体を知らないからなんでこの人こんなに強いんだ?って不思議がっていて、そりゃそうだその人は元ハイスコアボーイだからだよ!と突っ込みながら読んでました。エンダーもえげつなく手加減しないしw