最近読んだ本とか電子書籍はモノリスだよねってこと

そういや電子書籍というかKindleユーザーになって7年、先日既読が100冊を超えました。いやー100冊分がこのちっこい黒い板(正確にはAmazonさんとこのクラウド)に収まってくれるおかげで本棚圧迫せずに済んでてほんと助かる。紙の量にしたら相当だもんな。まあ全部がいわゆる本でもなくて、雑誌の一記事とか短編一話だけとかも含まれてるけどね。100冊何読んだっけなーとちょっと思い返しながら最近読んだ本の感想とか書いておきます。

さて。8割くらいは小説です。ジャンルはもちろんサイエンスフィクション。セールで買うことが多いから古典とか昔から作品を出している作家さんの旧作が多いかな。海外だとクラークやイーガン、国内は神林長平円城塔とか。円城さんは一時期短編一話くらいの長さの、音楽でいうシングルをよく出していてそれは買ってたなー。
SFで最近読んだのはクラークの宇宙の旅四部作。

 

 

2001年は随分前に読んでたんだけど当時は意味がよく分からなくて映画の副読本くらいの印象で、四部作をまた最初から読んでみるとなんだかめちゃくちゃ面白い。前から書いてるけど大学(社会人学生なのです) で物理をやってから描写の中に現れる現象や定義が科学に忠実だっていうのがすごく分かって。
特に2001年宇宙の旅のここ、

ディスカバリー号が得たちょうどおなじだけの運動量を、木星は失ったのだ。木星の速度は遅くなった。ーだがその質量はディスカバリー号の10の21乗倍も大きいので、軌道の変化は探知するにはあまりにも小さい。

アーサー・C・クラーク著 2001年宇宙の旅より)

うおー運動量保存則ー!こういうのさらっと書くクラークまじかっけー!なんか震えたよね。引用はいわゆるフライバイ(スイングバイとも)のことなんだけど、こういうのをあたかも体験したかのように書く外挿(っていうんだよね)の表現力は年数を経ても全然魅力が衰えないんですよね。確かに未来に関する細かい設定はずれてきているけど、運動量保存則みたいに変わらない部分はずっと面白いままだなあと感じました。

2010年宇宙の旅の木星の衛星イオの風景とかもすごかったな。いやークラークは実は既に行ってるよね、イオ(笑)無人探査はそろそろ太陽系出ちゃうところまで行ってるけど、3001年終局の旅では太陽系の縁(オールトの雲のあたり)まで有人で行きたいねえ、とまで言ってるし、なんだろうな現実よりヒトの想像力の方が空間も時間も超えて先に到達しちゃうってことに「ヒト、すごい」というセンス・オブ・ワンダーを感じる四部作でした。ヒトっていうかクラークなんだけど。

 

 

2061年宇宙の旅

2061年宇宙の旅

 

 

3001年終局への旅

3001年終局への旅

 

 

サイエンスフィクションも好きなんだけど、ノンフィクションもちょいちょい読んでて最近のはこれ。

ロウソクの科学。

 

ロウソクの科学 (角川文庫)

ロウソクの科学 (角川文庫)

 

 

電磁気学などでおなじみのファラデーが一般聴衆を対象に講演した内容の本です。
タイトル通りロウソクを使った化学反応を題材にしていて、講演自体は19世紀に行われたものなんだけど思ったより高度な化学的操作をやってのけたりしてなかなか面白かったです。でも文字と簡単なイラストしかないから分かりにくいところもあって世が世なら動画で見られるのになあ、と思うところも。
一方でこの講演の中で聴衆に対して「気になった人は家でもこうすればできるからね」ってきちんとフォローしてるところはすごくよかった。科学って一般の人にはなんだか手が出しにくい、高尚なイメージが(少なくとも私には)あると思うんだけど、そのハードルを下げていくアプローチが新鮮だったな。
今はサイエンスコミュニケーターという専門家と一般人を繋ぐ役割があるけど、ファラデーさんはまさにその魁的なことをやってるんだよね。そりゃこの本が今も読み継がれるわけだよな。あと聴衆の一人が持ってきた日本の和蝋燭が実験の後半で出てきたりして、すごく貴重なものだろうに「これ、ファラデーさんに使ってもらおうか」って思った人の気持ち、なんか分かるなあ。そういう聴衆の盛り上がりも随所に感じられて、厳格な科学実験というよりちょっとしたライブパフォーマンスぽい感じだったのかも。そりゃ楽しいよな。


電子書籍で思い出したけど、以前英会話教室に通ってた時によく本の話をした読書家の先生がいて、電子書籍ってこんな感じだよって見せたことがあった。先生は紙の方が好きだなあ、みたいなことを言ってたけどその先生に伝え忘れたことがあって。It's my little monolith. (これ、わたしの小さいモノリスなの) って。なーんてね。クラークもブラッドベリもギブスンも読んでた先生だったから、このギャグわかってくれたと思うんだよなー。

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