最近読んだ本

ここ最近読んだ本です。なんとなく今は読書の波がきてる感じ。ちなみに今はラヴクラフト読んでました。なんかここ最近クトゥルフきてる雰囲気。

 

まずは異常。

 

 

これはネタバレしてはいけない小説だと思うので、ちょっと難しいけどがんばってバレないように感想を書いてみます。

SFファンなので文芸作品というよりもSFとして読みました。SFでおなじみの早川書房さんだし。SF的には中盤で出てくるプロトコル42の男女コンビが良かったな。この小説、個々のエピソードを重ねていくことで外側の世界で何が起きているかを語るパートと、外側から現象にアプローチしていくパートで分かれていて、この二人は後者のパートであの異常な現象に巻き込まれていくんですよね。ここはなんだかちょっと懐かしのX-ファイルぽさもあったし、そもそも42は銀河ヒッチハイクガイドでおなじみのネタだしね。ちょいちょい挟まるサブカルチャーなネタが作品のリアリティを下支えしていて、そのいかにもな「現実感」が大ネタに掛かってくる構成が見事でした。

一方で文芸的な、というかフランス的な部分を感じたのは登場キャラクターの歳の差のあるカップルのエピソードですかね。歳を重ねても恋愛を人生に織り込む感覚が、すごくフランスぽいなと。あとこの現象にもし自分が巻き込まれたら?とも考えたよね。

けっこう先が気になってわりと一気に読んでしまった作品でした。未来になったら今のことを思い出しながらまた読み返したいな。

 

お次は怪談。

 

 

小泉八雲の日本名でも有名な、ラフカディオ・ハーン著怪談の円城塔さん翻訳版です。最初はニンジャ・スレイヤー的なトンチキジャパニーズおもしろ訳なのかな、と思ったのですがそういう路線とはちょっと異なるような、でも読んでると日本語なのか英語なのか脳の言語野がひっかき回される感じが楽しいテキストでした。1本目のミミナシ・ホーイチの寺やベランダから見る墓場の風景はどこか西洋のそれを感じさせるし、ロクロ・クビの元サムライの僧侶、クヮイリョーはなんだかスター・ウォーズに出てきそうだし、突如食卓にワインが出てきたりと読書中のイメージの飛躍やギャップが面白かったな。一方で虫の研究の段落では、解像度の高い日本文化の考察があって驚きました。100年も前にこんな風に考えていた人がいたんだ。ここ最近で海外から見た日本文化の解釈と表現で一番凄かったの、個人的にはゲームの「ゴースト・オブ・ツシマ」なんだけど、ここにちょっと結びつきを感じましたね。

 

最後は「プロトコル・オブ・ヒューマニティ」

 

「あなたのための物語」、「BEATLESS」などの理詰めで容赦ない展開だけど先を読ませる作品を発表されている長谷さんの新作SFです。

何から語ったらいいんだろう、と迷うくらいに示唆や考察のきっかけを含む、豊かな作品でした。これも続きが気になって自分的にはなかなか速いペースで読んでしまった。。これまでの長谷さんの作品は、どちらかというと機械の側に軸足が置かれていたのかな、と思うんですよね。機械が言語を持ち、人間と対話しながら敵対したり友好的になったり。機械の外側にある環境の一部としての人間、という面もあったと思います。今作はその反対の、人間の側に軸足を置いたお話なのではないかと。まぁ作品中に登場するAI義足にもかけてるんだけど(笑)特に人間らしさ、ヒューマニティを感じたのは主人公とその父とのやり取りの部分ですね。不謹慎な言い方をすれば、タンパク質と神経細胞のネットワークで構成された時限のある壊れゆく機械が人間で、その機械が壊れていく過程の中で何度も何度も消えては現れる「ある反応」に対する感受性のことを表しているんじゃないかな、と思うんですよね。いやーなんか変に理屈っぽい書き方したけど、「人間性」って言葉も含めた意味のやり取り(プロトコル)の間にしかないと思うし、それが全編うす暗い雰囲気の中でキラキラと輝いて見えたんだよね。私の大好きな、人間と機械の相克というテーマを人間の中だけで完結させているなんて凄すぎる。。

でもやっぱり一番刺さったところは、AI義足と生身の身体が完璧な一致を見せたシーンかな。こういう機械とシンクロする描写に弱いのよねぇ。。

なんというかSFというジャンルを超えているようなところもあるし、SFネタ的にはそれほど難解でもないので一般文芸の方でも読まれるといいな。