ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

SFの中でも時間ものってちょっと苦手なんですよね。読んでるうちに頭の中がごっちゃになってしまうから。あの人が未来で、こっちが過去で、まだあの事件は起ってなくてーとかやってると、紙にタイムライン書き出したくなります。でも、SFの中でもロマンスと結びつけた作品が多いことも魅力の時間SF。短編なので混乱も少なく読めて面白かったです。

この人の物語ですごいなあと思うのは、古代の生活などの描写がものすごくリアルに感じられる文章なんですよね。リアルアラビアンナイトのような世界に、きっちりSFを盛り込む手際の良さ、そして誰もが共感してしまうような普遍のテーマに落とし込むストーリーテリングが素敵でした。

  • 限りなき夏(クリストファー・ブリースト)

歴史的なワンシーンを撮影した写真ってありますよね。タイムズ・スクエア前で抱擁する男女や、戦火を逃れて逃げる少女の写真とか。写真は、景色だけを切り取っているのではなく、時間も切り取っているんだ、とつくづく考えました。読みながら思い浮かんだのは、映画「イノセンス」で鳥や炎が活き活きとしたまま凍り付いているシーンでした。

ライトノベルみたいで読みやすかったです。バカっぽい展開と、生涯に愛する人は一人だけ、という思春期ど真ん中な主人公の奮闘ぶりが可笑しくもちょっと切なくて良かったですね。これ漫画化したら面白そう。

  • 去りにし日々の光(ボブ・ショウ)

取り返しのつかないことってあるんですよね。でもあの時に戻ることは出来ないけど時間が救いを与えてくれることもあります。「時間」を主体として扱うSFだからこそ描ける救いのように思いました。

パック旅行であまり気分を害した事ってないんですがこんな旅行はいやだなー(笑)初めての時間旅行でドキドキ、キョドる主人公が、初めて海外に出かけた時の気持ちを思い出させて楽しめました。なんだかんだ言って良い経験になったと思うよ。

旅行自慢ってしたいとは思わないですが、でも「世界の終わり」を見に行ったらちょっと自慢したくなるかも。

ハリー・ライトは寝返りを打ち、あえて文字で書けば「ぶずずずぐぁあああおう!」とでもなりそうな声を発した。

内容にあまり関係ないけど冒頭のこの一文で笑いました。厳密には時間SFではないのかもしれないけど、いろいろなメタファが楽しい物語でした。

  • 旅人の憩い(デイヴィット・I・マッスン)

そう言えば時間の速さが一定って、どうしてそう思ってるんだろう?急流に放り込まれて流されてまた遡上してきた、それをくぐり抜けた後のびっくり感が面白かったです。短い中にある戦闘の迫力も良かった。

  • いまひとたびの(H・ビーム・パイパー)

この物語に登場する父親と息子が、なぜか漫画「鋼の錬金術師」のホーエンハイムエドワードに思えてなりませんでした。こんなに仲良くないけど。姿の変わった息子のことを識別するのを、外見だけでなく知性や精神で見抜くという父親の態度がなんだか良かったですね。

  • 12:01PM(リチャード・A・ルポフ)

時間ループものって怖いなあと思うんですよね。気が狂うわ…。

  • しばし天の祝福より遠ざかり……(ソムトウ・スチャリトクル)

時間ループものでもこういう頑張ってループを抜けるぞ!っていう心意気があると希望がありますね。

ああ、でもループものってこわい…(笑)

  • ここがウィネトカなら、きみはジュディ(F・M・バズビイ)

タイムトラベラーどうしの恋人って大変だなあと思います。待ち合わせに間に合わないわー(笑)