攻殻機動隊 ARISE : border1 Ghost Pain

攻殻機動隊の新たなるバージョン、ARISEの第一弾です。世界観はそのままに、キャラクターデザインも、声優陣も、脚本も音楽もほとんど刷新した今作ですが、冒頭でスクリーンに素子が登場したシーンで、これはありだ!と思いました。というかこのくらいの差分がないとバージョン変わった意味がないですよね。広く名前の知れたブランドでスクラッチビルド(一から構築すること)ができないしこれまでのストーリーで決められた枠組みの中で、よくここまで新規性が出せたなあと感心しました。おなじみのキャラクターなんだけど芯の部分はそのままで、新たな一面が見えるようでしたね。特にトグサさんとパズさんのイメージチェンジはかなり良かったです。9課きっての普通の人wトグサさんは前シリーズでも普通っぽかったですが、今回はさらに庶民っぽさが出ていて面白かったです。あれ、まだご結婚されてないのかな。パズさんは前シリーズではハードボイルド担当で無口なクールガイという感じだったんですが、今作ではちょっと親しみやすい感じになってました。なんていうか、無言実行なとこは変わってないけど行動が分かりやすい感じ。このパズさんも素敵ですね。そしてバトーさんは安定のバトーさんでした。なんだろうこの違和感のなさw 前作までは大塚明夫さんが担当されていて、あの「もとこぉ〜っ!」って叫ぶとこが大好きだったんですが、これは今作のバトー役松田さんが「もとこぉ〜っ!」って叫ぶまで判断できませんね。ってあるのかこのシーン。まあそれはいいとして、前作からほとんどブレのないキャラクターだと思います。ブレがないと言えば、荒巻も違和感なかったですね。声は違うんだけど、でもちゃんと荒巻なんですよね。声優さんってすごいなあ。
そして主役の草薙素子ですが、前回までの大人の女性から今作ではまだ少女の面影を残す若い女性となり、声優さんも田中敦子さんから坂本真綾さんに受け継がれました。田中さんの色気のある声もすごく素敵だったんですが、今作の坂本さんの少女の潔癖さ、高潔さのある声もキャラクターにすごく合っていて素敵でした。そう、今作の素子は、大人のような清濁合わせ飲むような柔軟さがあまりなくて、若さゆえの高い理想と潔癖さを頑に守ろうとする固さがありますね。でも素子は己の能力を最大限に活かす場を貪欲に求める人間で、その能力を個人のというよりも公共の利益に活かすような人だと思うんですよね。公共の利益を選ぶのは単に影響力の大きさの問題かもしれないけど。そういう芯の部分は全然変わってなくて、今作でも素子は能力を活かす場を奪われかけ、それを取り戻すことが目的の一つとなっています。もう一つは個人的な理由ではあるけど。
なんだろう、持てる能力をフルに使う仕事人ってやっぱりかっこいいですよね。素子の魅力は女性であるという部分も確かにあるけど(いやでも女性としてもうちょっとお洒落すればいいのに、とは思う。おかっぱって…)こういう才能のある人だから、という部分がとても大きいですね。

攻殻はキャラクターだけではなくストーリーも面白くて好きなんですが今作の脚本は冲方丁さんでした。いやーすごい人を持ってきたなあ。今作のテーマは記憶。記憶と現実の曖昧さはP・K・ディックなどの古典SFでおなじみですが、それを攻殻という世界観の中に置き換えた技巧は見事でした。ていうかこれもう一回見直さないと内容うまく把握できないわ。


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