PK

インド映画「きっと、うまくいく」のアミール・カーン主演の映画です。観てきました。

宗教を題材にする、というのは日本じゃなくても議論を巻き起こすもの。インドはヒンドゥー教イスラム教、キリスト教に仏教と多彩な宗教が混在する国でもあります。なんとなくのイメージだけどインドの人の微笑みを見ると、とっても信心深い人が多いのかなあと勝手に思ってしまうんですが、まあそんなことはどうでもよくて。
私は特定の宗教を持ってはいないけど、困った時の神頼みをする程度には信心を持ち合わせています。そんなに必死になるほど困ったこともそんなにないけど、世の中には神様にでもすがらなければどうにもならない状況なんて沢山あるんですよね。現実的な手段をすべてやり尽くした時に、本当に人が生きるために必要な支えのようなもの。明日もなんとか生きようと、ちょっとでも思えるもの。功徳や原罪なんて難しいことを言う前に、宗教はそういう支えであって欲しいと思います。


で。映画です。宗教という概念を持たない異邦人が宗教の根本を問い糾して騒動を巻き起こすという、コメディでありながら興味深いテーマを真摯に扱った映画でした。うん、面白かった。特に主演のアミール・カーンの演技が良くて、かなり風変わりな役どころを顔(あの目がギョロギョロするのがまたいい)や仕草(なぜか走る時に手をぴっと体側にくっつける)で表現していたのが良かったです。純粋さと非常識がうまく混ざり合っている感じ。
ストーリーは前作「きっと、うまくいく」のようにありきたりな展開をなぞりながら最後にちょっとびっくり、という展開。まあネタバレになるので避けますが、自分を助けてくれるはずの神様を探す男PK(酔っ払いの意味)とテレビ局のリポーターのジャグーが、熱烈な信者を集める宗教のインチキに切り込んでいくというもの。でも、インチキな悪徳宗教をばっさりときる、というほど単純なお話でもなく、そういう宗教がなぜ必要とされているのか(熱烈に求められているには理由がある)という部分もきちんと描いているんですよね。
手当たり次第にいろんな宗教の神様に首をつっこむPKの単純で現実的な願いを、どの宗教も叶えてはくれません。孤立無援の彼を助けてくれたのは、いるかいないかわからない神様ではなく生きている人々です。宗教は即物的な願いを成就させるためのものではない、ということがPKには理解できません。でも彼はそこで生きる人たちが困難に直面した時に、なにか現実的なものではない確かな支えが必要な時に祈る、という姿を見ています。そして何より、どうしようもなく孤独な彼は涙ぐみながら神に切々と語りかけます。本当にあなたが必要なんだ、と。


宗教にも良い面と悪い面がある、ということだと思うんですよね。心の支えとなるということは、その支えがなくなった時の恐怖も抱え込むことにもなるわけで。そこにつけこむのは悪い面でしょう。でも、どんな宗教でもこの問題は必ずはらんでいるんじゃないかなあ。信じないものは救われないのだろうし。
どの宗教が良い/悪いでもなく、信じることが良い/悪いでもなく、うまくバランスが取れた位置で語られる「信じるってどういうこと?」の映画でした。