ヨハネスブルグの天使たち

宮内悠介さんのSF短編集。DX9という少女型のロボットが空から降ってくるという幻想的なイメージを元に、未来と地獄を描いた作品でした。各作品ごとに少しずつイメージが重なり合って、最後に全体としてみた時になにかが浮かび上がっているような、そういう感じなのですが、その「なにか」がまだよく自分の中で見えないんですよね。虚無と言ってしまうとなんか何も言ってないみたいだし、希望というのもちょっと違う気がする。何かの輪郭ではあると思うんですけどね。
唄う人形が量産される未来も、遠くアフリカからニューヨーク、そして日本という舞台で描かれている地獄も、すっとそのまま歩いて行けそうなフラットな感じがすごく良かったです。地獄とはなにも苛烈な苦しみだけじゃなく、静かに蝕まれていくことでもあるし、なによりそこから抜け出せないということなのだろうと思います。この地獄の輪郭の内側から出られないけど、そこから溢れそうなものが描かれているんじゃないかな。