最近読んだ本とか

本格的に暑くなってきました。

この時期は知らないうちに塩分が抜けていってるのでお茶やお水と一緒にお煎餅とか食べてるんだけど、なんかそれも飽きてきちゃってめんどくさいしもう料理用の塩をそのまま食べてもいいかな、とか思い始めました。。あーずぼら。

ちなみにうちには、しっとりタイプとさらさらタイプと(そんなにお高くない)岩塩があるぞ。まあそれはさておき、皆さまも熱中症にはお気をつけください。

 

さて最近読んだ本の感想です。

 

まずは ツインスター・サイクロン・ランナウェイ3

 

 

1、2ときて、3で大ジャンプ。故郷のガス惑星(の周辺)を飛び出した二人は新しい世界に出会うのですが、そこでもいろんなトラブルが起こってはイチャイチャしつつ乗り越えていきます。3まで読んでてなんだけど、いわゆる「百合」の味わいがちょっと分かるようになったかもしれない。二人はそれぞれ個性(しかもとびきり尖ってたりほんわかしてたり)のある個人ではあるんだけど、二人の関係は時々霞んでしまうほど遠くて時々一つかと思えるほど近くて、お互いの重力で引き合う連星みたい。あーこういうのが百合なのかなー。なかなか操縦士としての能力を発揮できる状況から抜け出せない時にテラがダイオードにかける言葉がすごくよかった。

「あなたを自由に飛ばせてあげたい」

 

そう、今回は勝手知ったる故郷を飛び出したために、それまで培ってきた技能を生かせる場を求めて様々な場所を巡るお話なんですよね。まさに閉塞的な田舎から大都会に飛び出してきたような。例えるなら、車が少ない田舎の一本道道路でガンガン飛ばして仕事してたけど、都会に出たら狭いし速度は出せないし道がたくさんあって迷う、みたいな。でも二人は交渉したり罠にはめられたりしながらも、活かせる道を探っていくんですよね。この作品、二人の関係のその外側もきちんと描いていてそういうところに奥行きがあって。人が集まると考えもつかないような様々な文化が生まれてくる、その想像がとても楽しい。

 

さてお話は後半、やっぱりすごい方向に舵切りをしていてほんわか宇宙SFからハードSF?方面へと向かうように読めました。いやこれ、ここで終わらないよね?このあとも読みたい。。

 

次は カラマーゾフの兄弟 一巻まで。

 

 

二巻の途中まで来て仕事が忙しすぎて中断してますがとりあえず。ど直球のロシア文学です。けっこう難しいのかなと偏見を持っていましたがそんなことはなく、キャラクター主体でお話が進んでいくので思ったより読みやすいですね。で、この登場人物たちなのですが、読みながら「いいから人の話を最後まで聞け!」と言いたくなるほど、ほぼ全員が自分のことしかしゃべらない(笑)男も女もキャラが濃いというか、ちょう身勝手なんですよね。ネットの時代にこんな人たちがいたら炎上確実だよ。

でもイライラしてだめかというとそうでもなくて、不思議な魅力もある。例えば父のフョードルなんて粗暴で女好きで自分がモテると思ってる自信過剰で、そのくせ妙なところで道化を演じて自信のなさを隠そうとしているところもあって、いいとこいっこもないんだけど、変な方向に活力が溢れてるというかそういう魅力があるんですよね。

長男のドミートリイは父親に似ているところもあるけど、感情の上下が人一倍激しくて情熱的かと思えば冷酷でめちゃくちゃ気まぐれ。まあでもこういうのは女にモテるよな。。

女性陣も「こういうやついるわ(笑)」ってキャラばっかりで、ほんとに君たちこの時代でなくてよかったね。。

一巻はだいたい家族喧嘩で終始していたけど、それぞれが今の状況をどうにかしたい、良い生き方をしたい、という方面ではちょっと異常なくらいのエネルギーを持っている一家なんですよね。ベクトルは見事にバラバラだけど。

思ったよりも面白いので続きもぼちぼち読もうかな。というか早く繁忙期終わらないかな。。

 

最後はこれ。春にして君を離れ

 

 

知らない人はいないだろってくらい有名なアガサ・クリスティ作品。ミステリはほとんど読まないから、たぶん初めて彼女の作品をちゃんと読んだ気がする。

さて、最近の言葉で言うと「毒親」とか「(認識などの文脈でいう)アップデート」とかで語られそうな内容で、読後もすっきり解決という感じではなくどっちかというと嫌な読後感が残る作品でした。でもさすがはミステリの女王、文章を読ませる力が半端なくほとんど一気に読みました。すごいね、この細部にちょっとした違和感をねじ込ませながらも表向きなにも起きていないように思わせる、仕掛けの妙。こりゃファンが多いのも分かるわ。

読んだ感想としては「良心」の戦いの話なのかな、と思ったんですよね。主人公ジョーンはほとんど自己暗示的に夫や子供たちにとっての良い選択をしてきたと思い込んでいるんですが、その度に自分のうちにある声からも耳を塞いでいたんだと思うんですよね。「本当にその選択は、その言葉は相手のためになるものなの?」という省みる声。物語の終盤、その声の存在をようやく感じ取るシーンのこの描写が、最高に怖くて最高に面白かった。

奇妙だこと、誰かが一緒に歩いているような気がする、誰かとてもよく知っている人が。

ここが多分、良心の戦いの最高点なんだと思うんですよね。そしてその戦いの結末がエピローグにつながっていきます。あれだね、すべてのアップデートがうまくいくとは限らないんだよ、でもアップデートしようとすることに多少の意味はあると思いたい。。

 

で、このお話を自己暗示の物語としてとらえた時に思い出したのがこちら。

 

超絶音痴なのに貴族なもんだから周囲が気遣って全然気づかずにキャリアを積み上げていく音楽家のお話。時代背景も録音というものが存在しない時代に設定してあるあたりが絶妙で、彼女は自分自身の声を客観的に聴いたことがないんですね。

ちょっとコメディぽいところもある作品なんだけど、最後にとうとう技術が追いついて生まれて初めて彼女は自分の声を聴くんです。その瞬間にこの映画は最高潮に達し、そして終わる。なんとなくキャラクターや性格がジョーンと似ているような感じで、ふと思い出しました。

自分自身の偽りのない声を聴くのは容易なことじゃなく、本当は命がけなんだよな。ゴーストの囁きで死んでしまうかもしれないくらいに。