最近読んだ本とか

ここんとこ読んだ本の感想とか。忙しい割にまあまあ読んでたなー。

 

まずはザ・ロード

 

「すべての美しい馬」を読んでいいなと思ったので。これを読んでる時だったかな、作者の訃報があってちょっとびっくりしました。そっかー。。

ええと、内容はなんらかのイベントが起こり文明崩壊した後の世界を父と子二人が生存を賭けて旅をする物語。読みながら脳内イメージが「ラスト・オブ・アス」の物資が乏しく人間同士の激しい闘争が繰り広げられる世界だったし、父は「デス・ストランディング」のサムを彷彿とさせたし、ゲーム方面からのイメージ補強ありすぎでした。

まあそれはいいとして、ヒトが文化的に生きていくための最低ラインをがっつりと割り込んだ世界でそれでも「善き人」であること、「火を運ぶ」という使命を持っていること、という極限状態の世界にあるからこそ際立つ人間性が淡々とした筆致で描かれていて、いやーいいもの読んだなあ。子が時々父との会話の中で「わかった」っていうんですよ。でもこんな人間性がぎりぎりまで削られてる酷い世界の、父だって納得できない理不尽さをその一言で飲み込もうとするんですよね。その一言が出るたびに、世界はこんなに酷いことばかりじゃないんだという気持ちと、でもこの子の中では世界とはこういうものだという体験がどうしようもなく積み上げられてしまう、それがつらいんだけどなぜか読むことはやめられないという。

そういえば、この理不尽さを飲み込んでいくものとしてこちらを思い出しました。

スローターハウス5

こちらも理不尽な現実を前にするたびに「そういうものだ」という言葉一つで様々な感情を抑圧する描写が印象的なんですが、押さえ込むことでそこに生まれる強い反発を意識させるんですよね。どちらもストーリーの運びは淡々としていながらも、強い情感を感じるのはこういうところがあるからなのかも。

 

ちなみに映画の方も観ました。

ヴィゴ・モーテンセンのあんまり頼りにならなさそう、でも必死に子を守る描写が真に迫っててとてもよかったです。

 

お次は トランスヒューマンガンマ線バースト童話集。

 

タイトルからSFワード全開ですな。いいよね、ポストヒューマンもの。そしてアツいよね、ガンマ線バースト。童話集なので竹取物語やシンデレラ、アリとキリギリスといったお馴染みのお話をベースに、ハードSFの外装。。いや結構中身もSFに置換された感じのバリバリSFしちゃってる作品群でした。物語の語り口はおふざけ感もあってとても読みやすいし、なかなかSFでこんなに笑うことないかも。文章でも面白いけどアニメとかも合いそうな。

で、その一方でちゃんとポストヒューマンものとしても面白いんですよね。この作品に収録されているような「お話」を必要とするのは人間(ヒューマン)だけで、ポストヒューマンやさらに上位のトランスヒューマンはどこまでこういうものを必要とするのか、とか思っちゃうな。「アリとキリギリス」のお話は、誰かの人生の物語は誰のものなのか、みたいなところもある気がする。こういう「お話」を必要とする知性については、円城塔さんの「エピローグ」も近いかな。

 

こちらも「このストーリーは誰のためのものなのか」みたいなところが面白い作品で、おとぼけな文体でガリガリしたハードSFやってるのも近いかも。

 

ちなみに私の「ガンマ線バースト」はイーガンの「ディアスポラ」から、でした。こっちは文体もネタもガチガチのハードSFだけど。

 

最後は カラマーゾフの兄弟2。

 

 

2巻は兄弟の末っ子アリョーシャが僧院と実家を行ったり来たりして、兄貴二人と親父の面倒ごとをなんとかしようと奔走するお話。頑張れアリョーシャ。

で、この中で長男ミーチャとトラブルが起きた貧乏な元軍人にお金を工面するエピソードがとても印象的でした。アリョーシャ、聖職者でもあるから他人の善性を信じるのはいいんだけど、自分の善性に目が曇ってしまって都合の良いように解釈してしまう癖があるんですね。それでミーチャから謝罪と慰謝料を払わせることを元軍人に口約束してしまう(もちろんミーチャには裏取りしてないで)。で、元軍人も幼い息子が学校でいじめにあっていたりして、いっそ他所の街に引っ越して1からやり直したいしその元手にしたい欲もあるんだけど、傲慢なミーチャからあたかも施しを受けたかのように思われるのが嫌で、慰謝料の話は進むんだけど結局断ってしまうんですよね。なんかその描写がすごく貧乏人の金欠の切迫感と軍人的なプライドとの合間でグラグラに揺れててちょっと泣き笑いみたいな、悲劇なのになんかちょっと可笑しいぞって感じになっていてすごく面白かったですね。こういうところが文学なのかなあ。

アリョーシャはこの後次男のイワンのすごく長いお話に付き合ったりしてましたが、ちょっとよく分からなかったですね。。子供が虐待される胸糞エピソードは印象的だったけど。あとゾシマ長老、若い頃すごくやんちゃでびっくり。

この後アリョーシャどうなるのかなあ。まあアリョーシャだけでなく、他の兄弟も気になるな。