ラブクラフト原作のコミックがすごかったっていうこと

ホラー、映画も小説も苦手なんです。だって怖いから!でも妖怪とか悪魔とかは昔から大丈夫、というより好きで漫画で言うと水木しげるあたり。カレーで言うと子供向け甘口くらいのレベルなら好きですカレー。じゃなくてホラー。

 

で、ラブクラフトです。

ここんとこぼちぼち読んでるんですが、じめっとした感じとかジャンプスケアではない方向の描写とかが水木しげるっぽいな。。となんとなく感じていたところ、ラブクラフトの「ダニッチの怪」を漫画化したことがあったそう。あーやっぱり。読んでみたかったのですが、既に絶版してるし版権あたりの解決もなかなか難しそうで復刻は無理っぽい。うーん、残念。

あと、この作者特有の表現で肝心のところが描かれないっていうのもちょっと読み取りにくくて。「名状しがたいなにか」ってなんだ?そういう部分の想像を逞しくして読むのがホラーの醍醐味なのかもしれないけど、SF方面は鍛えてるけどホラー方面は全然なんだよね。。でも時々はっとするくらいイメージできたりもするし、ビジュアル的な補足があるともっと面白いかも、と思ってたところ。

 

というわけで、漫画版「ダニッチの怪」読みました。これ、すごくよかった!

 

 

 

 

「名状しがたいなにか」が物凄い描写力で描かれていて、原作の補足と言ってしまうには全然足りなくて、これは絵的な翻訳の一つじゃないかなと思いました。それもとびっきり解像度が高い。細部の描き込みも素晴らしいけど、全体を俯瞰したときに溢れ出す「悍(おぞ)ましさ」。人間を蹂躙する暴力性とぶよぶよした気味の悪い柔らかさという相反するものが分離せずに混じり合っていて、単純な不快さだけじゃない悪魔的な神々しさがある。巨大さもそれに一役買っていて、その大きさの前には人間の非力さ、無力感が圧倒的なんですよね。それでいて全体のバランスが取れてて。。すごいわ。

お話の方も没入しやすい展開に整理されてて読みやすくなってました。ダニッチ村の人々の群像劇的な側面もあるんですが、そのあたりの拾い方も丁寧で、通り一遍読んだだけでは印象が薄かったキャラクターたちの個性が浮き彫りになってて面白かったな。あと怪異に対抗するミスカトニック大学教授チームがなんとなくゴーストバースターズぽくて、緊迫したシーンが続いているところに個人的にはちょっとした息抜きポイントでよかったです。

いやーいいもの読んだ。

 

この作家さん、他にもラブクラフト作品の漫画化しているみたいなので他も読みたいな。「狂気の山脈」、冒険ものとして楽しんだけどいろいろ想像できていないところがあったしこの作家さんの絵なら信頼できるわ。