いろいろ感想をまとめて書いたらタイトル探しのAIが混乱したってこと(最近読んだ本とか)

ここ最近読んだ本とか。「ここ最近」がだんだん長くなってってる気がするな。。

 

ウィッチャー短編集2 運命の剣

 

表題作「運命の剣」など、けっこう本編にも関わるエピソードも読み応えがあったけど、ゲラルトと詩人のエシの秘めた恋愛を描いた「小さな犠牲」、ダンディリオンとゲラルトが人に擬態する怪物ドップラーの騒動に巻き込まれる「永遠の炎」など、ドラマやゲームにはないエピソードが面白かったです。「小さな犠牲」はイェネファーという恋人がいるけど、二人は共に人間の寿命を遥かに超える存在で長きに渡ってくっついたり離れたりしてるんですよね。そういう人とは違う孤独を抱える二人の恋愛もすごくいいんだけど、今作のほんのひと時(少なくとも長寿のゲラルトにとっては)の恋も、短い時間の間に様々な情動があってすごく切なくて良かったな。そしてその一瞬とも言える恋を、ダンディリオンが芸術家の繊細な視点で受け止め、技巧を尽くして歌い上げるんですよ。それも恋と同じようにたった一度だけ。誰にも知られることのないはずの切ない恋のお話が、誰かの記憶の中にそっと仕舞い込まれている救いがあって良かった。「永遠の炎」ではゲラルトとダンディリオンの珍道中が面白くて、よく考えるとダンディリオンって道化役もシリアスな役回りのエピソードもあるし幅の広いキャラなんだな。

 

小説の方のウィッチャーシリーズはいったんここまでかな。ドラマの方は続きそうなのでまだまだこの世界が楽しめそうです。

 

次はノンフィクションの「無限」に魅入られた天才数学者たち

 

連続体仮説カントール不完全性定理ゲーデルが登場し、理論や仮説の解説は控えめにその理論に関わった人々の人生や歴史に主眼を置いた読み物でした。まあ理論はもっと詳しい解説本とかあるしね。

特に興味深いのは「無限」を研究するカントールにもゲーデルにも、とても高い精神的な負荷がかかっていたということ。両方とも入退院を繰り返したり途中で全然専門じゃない研究とかに行ったり、「無限」という概念にどこか正視に耐えられない何かがあるような、ほんのりした不気味さがあるんですよね。

与えられた系の内部にいたのでは捉えられない概念や性質が存在し、それらを理解するためには、より高いレベルに移らなければならない。(中略)神はともかくも人間よりも高次の系なのだから、有限なる人間の心には神を理解することはできないのである。

「無限」に魅入られた天才数学者たち アミール・D・アクゼル著

なんかこの辺の狂気がラブクラフト的な世界観にもちょっと通じるのかなーとか。「無限」かあ。なんだか気が遠くなっちゃうね。

 

デューン 砂の惑星 上巻

 

 

だいたい映画の第一弾に相当するお話。いやー映画したい!ってなるのも納得の世界観、イメージ、キャラクターが優れた小説でした。こまめに区切った節ごとに視点が異なるのでそれぞれのキャラクターの心情がわかりやすくて読みやすい。レトとレディ・ジェシカのお互いを想う気持ちが良かったな。あと節の冒頭で引用される、恐らく未来の文献がいい感じに気を引いて楽しいです。中巻読んでるけど、映画公開とどっちが早いかな。

 

最後はカラマーゾフの兄弟 3巻

 

 

冒頭から三男アリョーシャ覚醒。でも3巻の圧倒的主役は長男ミーチャでした。いやー引き込まれた。なんだかよくわからない情熱(あれだけコケにされてた女性とくっつく)、なんだかよくわからないこだわりというか倫理(実際、役人たちにも鼻で笑われる)、なんだかよくわからない突然の落ち込み(ほんとによくわからない。。)。不明な経緯で手に入れた三千ルーブルと父親殺し疑惑のミステリ要素も加わって、かなり嵌って読みました。三千ルーブルの件はページ戻って読み返したりして。

なるほどなーこれは名作と言われるわけだ。

特に印象深いところというかだいたい全編をとおして、「三千ルーブルなんて言ってない!」(言ってる)、とか「殺したいとは言ったけどやってない!」っていう、雑な言動と本人の中で大事にしている事柄が思いっきりズレているところがすごくリアルだなと。なんか分かるんだよなー言質とられてイライラしてどうでもよくなっちゃう、でも本当はどうでもよくないってやつ。

そういう共感もありつつ、ミーチャの、アリョーシャの葛藤はとても私的でそういう内面が読めるのがやっぱり文学の面白さだなと思います。

 

さて次は4巻。全く出てこなかった次男イワンも出るのかな?