「善き人のためのソナタ」

善き人のためのソナタ スタンダード・エディション [DVD]

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これは、社会主義というフレームワーク、構造に組み込まれた人間の悲哀を描いているのだと思うのですが、
同時にそのフレームワークの崩壊のお話でもあったのではないかと思います。
ベルリンの壁が崩壊したのがちょうど中学生くらいの頃だったので、辛うじてその事は覚えてますが、
私より下の世代(30歳以下)にとっては、国家が個人にこんなに積極的に干渉する仕組みなんてほとんどファンタジーの領域なんじゃないかな、と思います。
というわけで、あまり感動は出来ませんでした。訴えてるものはハッキリわかるし、
管理社会の暗い一面には、底冷えのする怖さを感じたりしたんだけど、
どうにも現実感が伴わなかった気がします。
私にとってこのお話は、個人のドラマよりも巨大な構造が崩壊する様が面白かったですね。
主人公の行動が構造の綻びの一つとして描かれてるのも興味深かったです。
権威の象徴としての大臣や、忠実にコンセプトを継承した下位システムとしての主人公、
反抗分子としての劇作家ですら、構造上に適切に配置された機能という皮肉さが見えるような気がしました。
今の時代は国家はここまで個人に干渉してこないけど、国がどうあるかっていうのは人間の根本に
かなり深刻に根ざすものだなあと、改めて思いましたねえ。