「My Buleberry Nights」



久しぶりに映画館で。ウォン・カーウァイ監督作品も久しぶり。「2046」以来かあ。
この監督さんの風景の切り取り方がとても好きで、ガーッと列車が走りすぎるシーンとか、
時間の流れを変えて(速くしたり、ゆっくりだったり)不思議な雰囲気を演出したりとか、
ストーリーの傍らにあるものにずっとフォーカスしてたりとか、
そういう他ではあんまり見ない独特の映像が久しぶりに味わえて面白かったです。
で、撮影はクリストファー・ドイルさんじゃないんだなあ。
あの乾いた質感の映像も好きでしたが、でも、こちらの柔らかい感じの映像もなかなか良かったです。
お話は割とストレートで感情移入し易い感じなんですが、最近恋愛体力みたいなものが
激減してる身としては、冒頭の「失恋して怒る、泣く」という状況にイマイチ入り込めなくて困りました。
はああ。最近、こういう共感が知らないうちにごっそり落ちてるような気がして嫌だなあ(笑)
でもまぁ、いろいろ感じる所はあって、中でもジュード・ロウさん演じるジェレミーのエピソードが良かったですね。
ちょっと残酷なんですけど、ほんの一時、煙草を一本吸い終わるくらいの短い時間だけ、
思い出が向こうからやってきて「思い出だ」と確認して帰って行くっていう。
お話としての恋愛は悲しい方が好きだなあ、と改めて思いました。
一方でジェレミーの、エリザベスに対するあのちょっと「困っちゃったなあ」という顔がとてもステキでした。
好きって言う気持ちに困ってるんじゃなくて(多分もうそういう困り方はしないと思う)どういう風に気持ちを手懐けようかなあ、と
考えあぐねてるような、そんな風情がとても色気があって、まぁただでさえかなりのイイ男ですからねえ(笑)
前に、山田詠美さんの本のあとがきで、「恋愛をすると一日中その人の事を考えてるわけにはいかないけど、想いを肌に乗せておく事はできる」という
文章を読んだ事があって、あぁ正しくこの事を言ってるんだなあとしみじみと思いました。
それと、メンフィスでの場面で、レイチェル・ワイズさんが演じるスー・リンが切々と夫への想いを語るシーンがあるんですが、
あのシーンで初めて映画を観て「歌ってる」と思いましたねえ。
役者が実際に歌っている訳でもなく、BGMすら流れてないのに、スー・リンの悲しい想いが独り言のように語られてるだけなのに、
その言葉がとても詩的で、語り口が流れていくようで、映画を観てるのに悲しい恋愛の歌を聴いているみたいですごく良かったです。
恋愛のスリルや緊張感とか大騒ぎするような映画では全然ないですが、誰かが誰かを想うということがシンプルに描かれてて面白かったです。