「007 ドクターノオ」



先日、慰めの報酬のBDを購入したら、007の旧作DVD差し上げますキャンペーンやってて、それで頂きました。どれでも好きな作品選んで良いですよって急に言われても、どの作品のボンドがどの役者さんなのかが全然分からなくて、とりあえず適当に選んだら第一作目のこの作品でした。ショーン・コネリー演じる、粋でダンディなジェームズ・ボンド。というか、ショーン・コネリーに髪があるという時点でかなり驚きました。私の知ってるショーン・コネリーはカッコいいハゲなのです。あ、褒めてます。


007の第一作目ですが、荒削りな部分もあるけど現在の007にも流れている源流がいくつか観られました。
まずはカーチェイス。慰め〜のカーチェイスの激しさや緊迫感はとても素晴らしくて、今のところこのアクションを越えるものはないんじゃないかと思っていますが、この作品にもしっかりとカーチェイスが入ってました。映像効果の時代の差はどうしようもないけど、この「ボンドが車を乗りこなして危機を脱する」というダイナミズムは同じじゃないかなと思います。
それとアクションもしっかりと盛り込まれていて、スパイ映画で知られている007が以外とアクションを実直に魅せる映画だと最近気がついたのですが、この作品でもその片鱗を観る事が出来ました。拷問シーンもさりげなく入っているあたり、そういう面白さを提供するサービス精神は健在だなあと思いましたね。
ボンドの魅力を初めてスクリーン上で表現したのがこの作品ですが、ちょっと遊んでそうでありながら、実は仕事もできるんですっていう部分がとてもよく出ていました。ボンドはそれぞれ演じる役者さんで少しずつ違うニュアンスが楽しめるのですが、やっぱり根本のキャラクター像がシンプルで人間味溢れているからなんじゃないかなと思いましたね。恋愛と仕事っていう、男性にとっては秤にかけられない(笑)両方をうまくやりこなして、自分のやり方をびしっと通す。007は男の人の方が楽しんで観ているイメージがあるのですが、こういうキャラクター像をかっこいい役者さんが演じるんだもの、男性がわくわくするのは当たり前なのかもしれません。
逆にこの作品ならではの部分と言えば、やっぱりスパイという概念が生々しく残っていたと思わせる設定ですね。もう30歳以下の人には「西側、東側」って言っても通じないんじゃないかと思います。そういう30オーバーの私でも微妙ですもの。こういうストーリーを観るとやっぱり昔は世界が二つに分かれていたんだなあと思わずにはいられませんでした。
それと科学技術に対する異常に逸脱したイマジネーション。ロケット発射と核技術がごった煮になった混沌具合が、最近のリアリティを追求してちょっとインパクトに欠けてしまいがちな映画を見慣れた目には刺激的でした。ちょっと前に流行ったレトロフューチャーというジャンルがあるのですが、それよりももっと濃い感じ。人間の想像力というか、妄想の力ってすごいよ。
この辺の映画って人間関係の描き方もすごく濃淡激しいというか、初対面でいきなりヘビーな人生経験語りだしたり、あっさり脇役が死んじゃったりするんですよね。最近の映画だと脇役でもちょっといいエピソード用意したりしてけっこう丁重に扱われているんですが、そういう乱暴さが面白かったです。脚本の作り方もきっとこういう乱暴さから出発して、いろいろ試行錯誤していると思うのですが、現実にはこういう乱暴さ、脇役が死んだ後でちょっと悲しんだ後、美女といちゃいちゃするって言う方が実はリアルなのかもしれないと思いました。