「カイジ 人生逆転ゲーム」



自業自得という言葉が好きです。自分の業、自分がしてきたことの結果を自分が得る。あまり良い意味で使われることはないけど、こう考えることもできると思うんです。自分で努力した結果を得られるのは自分、だと。この言葉には自分の人生を自分自身でどうにかできる、という思いが込められているように思います。
自分の人生をどうにかすること。それにはまず、自分で何かをする必要があります。一人の力では実現出来そうにないことは誰かの助けが必要だけど、自分から働きかけなれば始まらない。
でも、この物語に登場する人々は、皆自分から何もしようとはしません。そして得た結果を「違う、こうじゃない」と放り出している。もっと素晴らしい結果になるはずだと夢見ているのです。でも、何もしていないのに、「自分でして来たことの結果」がそれ以上になるわけがない。一般的な使い方の自業自得です。
そして、極限の状態に追い込まれて初めて、その何もしない自分と向き合わざるを得なくなるのです。これまで全力で回避してきた自分というものに向き合った時に、自分から一歩を踏み出した時に、ようやく彼らは彼ら自身の人生を生き始めます。雨の中、「生きてるぞ!」と叫びながら。
自分から目を背けずに、今そこに居る自分を受け入れること。そしてそこから得た結果を受け取ること。これはそういう自業自得の物語なんだと思います。


漫画を先に読んでいたので、どういう風にアレンジするかという部分をとても楽しみにしていましたが、これはなかなか良かったです。ストーリーや展開はオリジナルの面白さが残してあって、映画的な「場」の面白さを役者さん達の気迫の演技で最大限に引き出していて、引き込まれるように観ました。
最も期待していたのが、利根川を演じた香川照之さんでしたが、もう期待以上でしたね、彼は。人間の悪という部分をきれいに演じられる役者さんは沢山居るけど、ここまで生ぐさい腐った悪を表現出来る役者さんはなかなかいないんじゃないかと思います。あの最後のゲームでカイジと対峙した時に見せた、白目を剥きそうな程鬼気迫る演技は、真に迫りすぎて逆に面白くて思わず笑ってしまいました。
もちろん、カイジを演じた藤原竜也さんもとても素晴らしくて、オーバーアクション気味なのが逆に(かなり絵が特殊な)漫画が原作の映画の演技としては最適に感じられましたね。台詞がきちんと聞こえないくらい気持ちを入れすぎる演技とか、その一瞬の場の高揚感を逃さないシーンがとても面白かったです。