「The Brown Bunny」

ブラウン・バニー [DVD]

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「Buffalo'66」を観た時に、このヴィンセント・ギャロさんという人はすごく感受性の強い人なのかなあと思っていたのですが、
今回のこれもまた男の人の繊細さがとても愛おしくなるような映画でした。
台詞や音楽がとことんそぎ落とされていて観る側に想像力を要求する、本で言うと余白の多い本作ですが
なんとなくカメラのアングルに見守るような優しさが感じられたり、彼の彫りの深い顔が柔らかな光の中でも影を落としていたり、
いろいろと自由に意味付けをして楽しみました。
なんだろうなあ、男の人って女性が思っている以上に「理想の女性像」をはっきりイメージしてる気がします。
本作の主人公で言うと、「デイジー」がそれに相当していて、彼女を探していろいろな女性に声をかけるけど、どれも違う。
声をかける女性が皆、花の名前だっていうのも意図的なんですが、男の人の運命の感じ方の一面が見えて興味深かったですね。
まぁすべての男性がこういう感じ方してるとは思わないですが。
で、はっきりイメージ出来ているのに最初から違うと分かっていて声をかけては、その違いに傷ついてしまう。
この辺の矛盾はちょっと分かりにくいですが、「デイジー」じゃないという事実を強く感じれば感じる程そこから逃避したいという強い反動が働いているような気がして、
ちょっと切なくなりましたねえ。
延々と続く道路や、見渡す限りの広い大地を疾走しているのに、どうしてもそこから抜け出せない閉塞感が主人公の横顔や殺風景な風景で表現されてて、
なかなか良かったですね。
ストーリーやネタに頼らない、情感だけを丁寧に拾い上げた、しかも男性側のこういう繊細な一面を描いた作品は珍しいんじゃないかなあと思いました。
というか、下手に女性誌の男心アンケート読むより、いろいろ考えさせられたなあ。男のこと(笑)