「秒速5センチメートル」

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

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びっくりした。
見始めて5分くらいで、涙腺が刺激されてしまって、思わず泣きそうになりました。
5分という時間では、
お話は進んでないし、そんなに感情移入出来る程キャラクターに馴染むのでもないのに、
写真のような(実写的っていうのじゃなく、印象としての写真)背景
や囁くように語られる印象的な独白だけで、こんなに感動出来るんだなあ。
いやー、恋空では泣く自信がまったくないけど(笑)こういう情緒だけで
感情を高める映像ってすごいと思いました。
ストーリー構成はこの新海誠監督独特の、『二人だけの世界』に凝縮されていて、
昔から恋愛の純粋化に死を使うお話はとても多いけど、お話の世界を二人だけに凝縮させることで、
恋愛の濃度を高めてるんだなあと思いました。
まぁこういう構成のお話も珍しくはないですが、特に面白いのは「二人だけの世界」に縮小しているのではなく、
背景やキャラクターの演技で、すごく大きな世界観を表現している事。
とにかく空がすごく美しい。ちょっと現実離れしてる表現ではあるけど、
心象風景として、宇宙や遠い場所(憧れている場所)、理想の女性像なんかが上手く組み込まれてて、本当に素敵でした。
それと声優さん達の声の演技もすごく上手で、語尾の震えとか独白のまっすぐな声や、
思わず漏れる吐息とか、良かったなあ。
テーマについては、これ、交差のお話なのかな。
インタビューで監督はスピードについて描いていると言ってて、そのスピードに乗って生きてると、いろんな人とすれ違う。
運良く、進む先に交差する人が居たら良いけど、多分2話目の女の子は主人公の男の子が
通り過ぎた後に交差してしまったのかもなあ。
で、男の子がこれまでの人生でぴったりと交差したのがあの女の子なんだろうな。
でも悲しいかな、そのスピードや交差は自分でもどうしようもなくて。
そんな悲しさとその交差の儚さ、希少さが桜の花(雪)で表現されているような気がしました。
若い恋愛のお話という側面では、その拙さや瑞々しさはとても懐かしい共感(実際そういう経験なくても)があって良かったのですが、
一方ではなんていうか、すごく孤独だなという感じもしました。
スピードに乗ってる自分の線上には自分しか居ないという孤独感、その線の先が見えない不安感、
それがあの男の子の常に遠い眼差しに込められてるように思いました。


それと、主題歌がね、これはずるいよ(笑)
これ普通に良い曲だもの、心動かされないはずがないよ。
というか、この映画、私的に「One more time, One more chance」のミュージックビデオに決定なんですが。
音きっかけの演出もステキで(ベタだけどこういうの好きだ)ラストのタイトルに被ってこの曲が流れた時は鳥肌立ちました。ははは。
詩の内容とシンクロする部分もあったり、曲自体に思い入れがあるとさらに感動が増量ですね、これは。


あとこの曲、別の映画の主題歌でもあるのですが、そちらもとても良いです。
月とキャベツ
二人でキャベツをもりもり食べるシーンが好きでした(笑)


月とキャベツ [DVD]

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