「ディファレンス・エンジン」

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)



読むのが遅い人なので、やっと読み終わりました。
えーと、正直に言うとあまりよく分かりませんでした(笑)
表層のストーリーは追えたんだけど、そこに含んでいる意味とか構造までは読み取れなかったなあ。
ていうか、SFってそういう深読みが肝だとおもうんですけどね。。。
まぁでも「ニューロマンサー」だって最初挫折して2、3回読んでから面白かったし、
これも何回か読んで違う面白さを発見出来るかもなあ、と思いました。
すっごい時間かかりそうだけど。


さて、お話の方ですが、陰謀渦巻く大都市ロンドンを舞台に色々な個性的な登場人物やガジェットが登場して、
それらが交差しながら展開して行く、という感じなのですが、登場人物多い
私の小さなメモリではあっという間にオーバーフローしてしまいました。
主要キャラクターのシビルとかマロリー博士とか、登場回数が多い人はいいんだけど、
時々「え、誰だっけ?」っていう人がひょこっと出て来たりするので、何回もページ戻ったりしてました。うう。。。
その中でも好きだったのが、フレイザー警部でした。
ロンドン大悪臭の最中でも冷静沈着で、行動も控えめな感じが渋くてステキだなあ、と思って読んでましたねえ。
実在の人物で知ってる中では、バベッジ卿とエイダですね。バベッジの計算機って情報処理の歴史で習ったなあ。
読んでて、あの白黒の写真でしか見たことがなかった計算機のイメージがすごくくっきりしていくのが楽しかったです。
それとエイダが、変にフェミニズムの権化みたいに描かれてなくて、天才的な変人っぽくて面白かったです。
飲んだくれなんだけど、複雑な理論を構築したりして、加えてレイディの優雅さが絡み合ってて、登場回数が少ない割にすごく印象深かったですね。


SFと言えばガジェットの配置も見逃せないところなんですが、この作品はスチームパンクということらしいので、蒸気関係のガジェットがすごく新鮮でした。
流線型の蒸気乗用車(ガーニー)が、馬と並列で走ってるロンドンの街っていうイメージだけですごくワクワクしちゃいましたね。
それと蒸気画像(キノトロープ)が興味深くて、それがパンチカードで制御される仕組みが楽しかったです。パンチカード!
もう大分前になるけど、金融系の情報処理センターで働いてた頃、汎用機のJCLはパンチカードだったなあ(今はもうないかも)
それこそ、紙の束を読み取り機にセットして、ボタンを押すとお札を数える機械みたいにダダダッと読み込まれるんですね。
当然、ジャムったりもしてました。微粒子が原因ではないけれど(笑)
そういう思い出も個人的にあったし、クラッカーなる技術者達のいかにもありそうな会話がすごく楽しかったです。


で、↑でスチームパンクって言ってしまってますが、最後の方を読んで行くと実は情報のお話なのかな、とも思えました。
最初の方でクラッカーであるミック・ラドリーが、「大切なのは、何を知っているか。土地や金や生まれより、情報だ」と言い切ってるし。
で、その情報がどういう風に利用され(例えば警察の機関とか個人ファイル管理とか)、どういう加工、処理(機関点刻写真とか)を施されているかって言う部分で、スチームパンクな世界観を使ったんじゃないかと思いました。
で、サイバーパンク的な側面としては、お話の中でオリファントが提唱した「機関を使って人口を統計学的に調査して、そこからパターンを導き出す」という課題、
それを実現する為には、すべてを見そなわす眼が必要だという事、これこそ現在世界一の監視カメラ社会であるロンドンの現在に繋がってるんじゃないかなあ、と思いました。
そういうサイバーとスチーム、2重の楽しみ方ができて面白かったです。ちょっと長いけどね。。。




上巻の解説を伊藤計劃さんと円城塔さんが共同で書かれています。
わー、なんだかギブスンとスターリングみたいだよーと、ミーハーに喜んでしまいました。
が、ちっとも理解出来ませんでした。。。でもすごいな、まったく違う人同士がこんな文章書けるのって。