「メタルギアソリッド4」(後半)

!!! 以下ネタバレを含みます !!!










ACT3: Third Sun
サニーとナオミのぎこちないけど微笑ましいやりとりが良かったです。
サニーにとっては「外」の人であり、もしかしたら初めて接した大人の女性だったのかもしれませんね。
ナオミにとっても普段あまり接することのない「子ども」に、母性のようなものを感じたように思えました。
そして、ここでのオタコンとナオミの関係ですが、彼らは同じなんですね。
自分の作り出してしまったモノに苦しんでいる。
そして二人はその罪悪感を共感として近づいて行くんですね。
でもナオミはここで一つの決断をしているんだと思います。
罪悪感では運命を収束はできても、その先を導くことはできない、と。
そしてナオミはサニーの中に過去の自分を見いだしていますね。
そこにもう一人のあり得た自分、内側で自分自身を探している女の子が外側に出たらきっと違う答えを見つけられるという希望を、
感じたんだと思います。
かつてナオミを外側に押し出した張本人、ソリッド・スネークが側に居るから。
だからナオミはサニーを選んだんだと思いました。


小雨に煙る街を背景にして駅を出たスネークが物陰に身を潜めつつ、オタコンに連絡を取る、古い映画のようなワンシーン。
ここで思わず「あーこういうの好きだ!」と叫びました。ほんと、一人でプレイしてて良かったです(笑)
スネークさんの探偵スタイルも新鮮だったし、若返り顔も渋くて良かったです。
東欧の街全体のクラシックな雰囲気もすごく良いし、いつもと違ってレジスタンスを尾行するっていう、探偵のようなゲームがすごくハマりました。
これこそ「敵に見つからないようにする」ゲームの突き詰めた形だと思うんですよね。
この部分だけのゲームがあってもいいとすら思えました。絶対買うよ。
尾行中に明らかに怪しい人影を見つけたり(後のデモシーンで出てた)、レジスタンスの無茶にびっくりしたり、仕掛けがいろいろあって、ここはゲーム中一番楽しんでプレイしました。


さて、ここでようやくエヴァが登場して、物語が一つの山場を迎えます。
しかしどんなに年をとっても、セクシーという言葉を忘れない女だな(笑)
声を担当した夏木マリさんですが、これはトレーラーで観てたので、やっと登場してすごくワクワクしました。
声もエヴァという女性を全面に出したキャラによく合ってるし、声の演技も上手くて良かったです。
この3からの登場となったエヴァですが、彼女は過去からの使者なんだと思うんですね。
そしてスネークとリキッドの原点でもある。
使者というよりメッセンジャーかな。ザ・ボスの意思をビッグボスに伝えたのも彼女だし。
二人の蛇をこの世に運んだのもまた彼女でもあるし。
で、そのメッセンジャーが伝えるもの、それがMGからMGS4までを貫いて来た謎の真相なんですね。
このシーンでは、衝撃の事実が多く語られ、何度も「えー!?」とか「そうだったの!?」とか、作り手が望むままのリアクションをしてしまいました。
愛国者達については、3で語られたものと2で語られたもので違いがあって、ずーっと疑問に思ってたのですが、ここですっきりしましたね。
MGS2のラストからずーっとだよ。長かったわ。。。
そしてここに来てスネークはようやく自分がどうやって生まれてきたかを知ったんですね。
愛国者達の成り立ちも。
過去を知ること。真相を知ること。それを知らなければ、本当に「終わらせること」はできないから。
エヴァはそれを伝えるためにスネークの前に表れたんでしょう。
彼女もまた罪を抱える一人で、それを未来に残さないために自分の息子であるスネークに託したんだと思いました。
そしてエヴァはビッグボスのために命をかけるんですが、ここは感動しましたね。
あぁずっと想ってたんだなあ。
彼女がオーバーラップでビッグボスを思い出す度に、切ない気持ちになりましたね。


バイク脱出ですが、ここはかなりパニックになりました。
こういう次から次へと出てくるやつに、素早く対応出来ない。。。
それでもここは音響がすごくてかなりテンション上がりました。
ゲーム冒頭からかなり臨場感のある音響でプレイして来たのですが、この場面でのむちゃくちゃな爆発音が最高でしたね。
耳を聾するって、こういうことだなあ。それにつられてテンションも最高に上がりました。
エヴァが乗っているバイク、トライアンフというものらしいのですが、これエンディングの「Here's to you」の歌詞にも出てくるんですね。
勝利、という意味らしいです。
名前も、フォルムも、それに乗ってるエヴァもとてもカッコ良かったです。


レイブン戦ですが、ちょこちょこ動き回わられて大変苦労しました。。。飛ぶやつとか苦手なんだよね。。。
見つけるのが大変だし、撃っても全然当たってないし、遠隔から大ダメージくらうし。。。
それでもEASYでは滞空時間が長かったりするんですけどね。
それまで溜まってた弾丸のうち、かなりの数をここで使ってしまいました。


さてもう一つの山場というか、こっちが本当の山場ですね。
ここでは主役はスネークさんじゃないです。はっきりとここは、リキッドが主役でした(笑)
このMGSというお話は、この二人というか蛇一族の因縁の物語でもあるんですが、
特にスネークとリキッドというのは、常に互いに立ちはだかる存在で、どうあっても倒さなければならない相手なんですね。
で、面白いのがこの二人の性格の違いで、リキッドは本当に好戦的で野心家なのに、スネークの方は、(個人的なイメージですが)すごく暗いんですよね。
でも根っこの部分での、意思の強さ、というか意地っ張りで頑固なところは同じで、これは蛇一族共通の性質なんだろうなと思います。
ここでのリキッドは完全に悪役に徹していて、観ててすごく楽しかったです。
「これぞガンズ・オブ・ザ・パトリオットだ!!!」と叫ぶシーンが最高でした。
あのぐーを突き出すポーズで、思いっきりテンション上がりましたねえ。
MGSでは完全に理解し得ない相手として互いに立ちふさがっていたけど、ここでのリキッドはかなり明確にもう一人の存在(スネーク)が
世界で一人しかいない肉親だということを自覚していると思うんですよね。
好きか嫌いかは別として、というか嫌いすぎてほとんど好きになってるような感じで。
一方スネークの方は、そういう感情をずっと否定してるように思えますね。
というか、リキッドが謎すぎて正体を掴み損ねているのかもしれないけど。
リキッドはどうやっても父親の影から逃れられないんですね。
スネークも同じトラウマを抱えてるけど、リキッドはそれ以上ですね、もうこれは。
とにかく反抗しなきゃしょうがない。
この部分に、スネークとは違う意味での父親と息子の関係が表れているように感じました。


ACT4: Twin Suns
雷電にとって「スネークを解放すること」が、「やらなければならないこと」それを自分の意思だと思い込んでるのですが、それは違うんですね。
雷電には向き合わなければならない、ローズという存在があるのに、そこから逃げてしまっている。
それをスネークはきっちりと自分の宿命だ、と言い切ることで否定します。
そしてあまりの状況にオタコンは諦めようと言い出します。「僕らの負けだ」と。
でもスネークは諦めないんですね。「勝ち負けじゃない」と。これは自分で「やらなければならないこと」、宿命なんだと。
この壮絶なまでに固い意思が、誰にも渡すことが出来ない、自分だけのものとしての意思が強く提示されていて、
これからの物語がより一層重くなっていくように感じました。


シャードー・モセス島。ただただ懐かしさだけが、ありました。
夢の中で、ヘリポートチャフを取ろうとして見つかっちゃうところまで、1998年そのままでした。
ハードの性能がスキップして上がって(PS→PS3)、観た目はかなり新鮮になりましたね。
構造物のディテールもテクスチャも違うし、粉雪の舞い方も全然変わってる。
操作も違うし、もはやソリトンレーダーなんてものもないけれど、でもMGSという物語が展開されていた場所だというのは、もう分かりすぎる程分かりました。
またここに来ちゃったんだなあ、という妙にしんみりした気持ちになりましたね。
ところどころでフラッシュバックされるセリフの数々が、一字一句くっきりと思い出せる自分のハマり加減に多少呆れもしましたけども(笑)
でもここにあるのは、ただただ荒涼とした風景だけで、MGSのラストシーンで描かれたような美しい風景ではないんですね。
このシャドー・モセスという場所は、もう何も生み出さない、ただ終わって行くだけの島として描かれているんですが、
これがスネークさんの「やらなければならないこと」、「終わらせること」と呼応しているように思いました。
でもそこにあった思い出まで消えてなくなってしまうわけではないんですね。
オタコンのセリフで「年を重ねるのも悪いことばかりじゃない」とあるんですが、センチメンタルな話の流れにこの言葉が前向きに響いて、すごく良かったです。
ある時、オタコンに無線してみたらMGSでM1戦車を生身で破壊した事に触れ、「君(スネーク)って本当に非常識な人間だよねえ。」って笑ってました。
この会話で本当にオタコンはスネークの事、大好きなんだなあって心が温かくなりましたね。
特技のある友だちのことを誰かに自慢したくなる気持ち、分かるような気がします。
また、スネークさんの方もウルフドッグのことを気にかけるオタコンに対し、慰めの言葉をかけたりするんですね。
この人がこういうセリフを言うのはなかなか珍しいなあと思って、二人の友情が垣間見えてすごく良かったです。
スネークさんは、だいたい皮肉か「まずいことになった」しか言ってない印象があるんですよね(笑)
もう、この二人は物語世界のコンビ、ベスト10に入ってもいいと思います。
そういえば、無線でMGSのハインド戦の話になった時、とても珍しい「恥ずかしがるスネークさん」を聞くことが出来ました。
いやーここは大爆笑してしまいましたね。ナイスだ、オタコン。


ウルフ戦ですが、ゲーム中ここが一番苦労しました。
動き回るのはレイブン戦と同じなんですが、フィールド広すぎる!
自分がどこに居るのかすらわからなくなったりしてました。。。
あと、吹雪での体力消耗がけっこうキツくて、しかも対処法が分からなくて、かなりバテバテな状態でスネークさんを走らせてしまいました。
何度か気絶したし。。。
風向きに注意してって言われても、ウルフを探してる間に敵兵に見つかったりして逃げてるうちに風下に来ちゃったり、
風向きが急にくるっと変わったりして、全然出来ませんでしたね。。。
まぁEASYだと一発のダメージが大きいのが唯一の救いでした。


ここからは山場に次ぐ山場がつながり、エンディングへ向けてお話が加速して行くのですが、ここでゲーム開始から初めて泣きました。
オタコンとナオミ、互いに想い合っていながら、過去が運命がその前に立ちふさがって、二人を切り離してしまう。
その時のオタコンの気持ち、「今度こそ、好きになれると思ったのに」というセリフ。
この喪失感、MGSでのウルフ、MGS2でのエマ、そして今回のナオミの3度目の壮絶な痛みを伴う喪失が、とてもとても切なかったです。
でも彼は、MGSで早く殺してほしいと懇願する愛する人を前に、何も出来ずに泣いている気の弱い青年では既にないんですね。
彼にも「やらなければならないこと」があって、心を悲しみに任せていられる余裕がないという状況で見せるオタコンの覚悟に、
「失うばかりじゃない」という言葉に本当に心が震えるような気持ちになりました。
そしてナオミがサニーに託した希望が実った瞬間でもあったんですね。
この時のナオミの、「やらなければならない」ことをとうとう果たした喜びがとても印象的でした。


脱出戦からRAY戦ですが、まさかMGS4でロボット大戦をするとは思ってもいませんでした(笑)
ここは物語の流れもありますが、かなり熱くなりましたね。
操作が簡単な割に打撃を加えた時の爽快感がすごくて、技が決まる度に快感に震えてました。
周りの建物がガンガン壊れていくのもすごく気持ちいいし。
MGSらしくないと言えばその通りですが、この格ゲーぽい爽快感はすごく好きでした。
そしてここでは、これまでさんざん破壊してきたメタルギアを利用するんですね。
まるでこれまでして来たことが無駄だったかのような皮肉と、どうやってもそれから逃れられない業のようなものを感じました。


リキッドですが、この人は話が進むに連れてどんどん幼稚になってますね。
度が過ぎた幼稚さを惜しみなく披露するイキイキしたリキッドが、すごく面白かったです。「じゃなぁぁぁぁいっ!!」(笑)
この人はちょっとおバカなくらいの大袈裟なパフォーマンスがすごく似合うなあ。
それに「まだだ!まだ終わってない!」という名台詞。
このセリフを聞くと無性にテンションが上がります。また聞けて良かった。
一方スネークの方は、もう死にかけっていう悲惨な状態になってて、この対比が明暗はっきりしてました。
ここでの雷電が、MGSのグレイ・フォックスのオーバーラップを演じているように思えました。
自身の損傷を顧みず、スネークを助けるという部分ですね。
もう一つ、自分自身を見失っている(ローズを忘れようとしている)という点でも、グレイ・フォックスなんだと思います。
そして、グレイ・フォックスが最後にフランク・イエーガーに戻ったように、彼も最後の瞬間「ジャック」へと戻ったんだと思いました。


ACT5: Old Sun
とうとう来るところまで来たなあ、と思いました。
最後の戦いの、最終局面に差し掛かっているんだという緊迫感を感じましたね。
全員で甲板を歩いて行くシーン、ゆっくりカメラを回してる感じが、すごくカッコ良かったです。
ここでの大佐とメリルのやり取り(というか大佐が一方的に語りかけてるだけ)が、すごく良かったです。
メリルにとっては過去のいきさつからどうやっても本当の父親である大佐に心を開けないんだけど、
大佐の、娘としてのメリルにではなく、一人の軍人として彼女にかけた言葉が、すごく印象的でした。
MGSではメリルは戦死した父親の後を継ぎ、認められたいという気持ちで軍人になったと告白するのですが、
ここではまさに、本当の父親から、メリルは一人の軍人として認められたと思うんですよね。
「おまえは私の誇りだ」。上官から兵士へかけられる言葉として、これ以上褒める言葉は無いような気がします。


最後の潜入となったアウターヘイブンへのボーディングですが、最初から警戒モードでかなりビビリました。
敵兵みんな殺気立ってて怖かった。。。
ボーディング直後の無線で、メリルとコンタクトを取るのですが、
負傷したメリルがSOPで制御されないリアルな痛みを訴えるのに対し、「生きてる証拠だ」と皮肉を飛ばすスネークさんがすごく印象に残りました。
ここは歴戦の兵士の貫禄のようなものを感じましたね。


最後のBB戦、マンティスですが、これはレイブン/ウルフとは別の意味で苦労しました。
マンティスと言えば攻略の謎解きなんですが、今回もその攻略法を見つけるまでが大変でした。
もう、攻略法見つけた時は笑いましたね。これか!と(笑)
さらに操られた敵兵がワラワラする中での戦闘だったり、スネークさんが行動不能に陥ったりと、アクション苦手派にはやっぱり苦しい戦いでした。
でも戦闘後のMGSファン向けのサービスは、本当に嬉しかったです。
この辺は物語がエンディングへと加速する中で、違う意味で盛り上がって良かったですね。


メリルはMGSに続き、またも同じ手に堕ちてしまう訳ですが、もう彼女はそれを見境もなく悔やんだり、落ち込んだりしないんですね。
メリルにとって、考え方や頑固さが嫌いになっても、スネークはやっぱり尊敬する人で、
その人を命がけで守ろうとする、そういう強さを得たんだと思って、このシーンでは感慨深いものを感じました。
メリルがスネークの肩を借りて、束の間気持ちの揺れを抑えるシーンがあるのですが、
この「肩を貸す、借りる」というだけの関係に、互いに尊重し合っている決意が表されているように思いました。
メリルとジョニーはここでようやくエンディングを迎えるのですが、このお話も長かったですね。
言ってみればMGSのもう一つの歴史を描いて来た(笑)ジョニーもようやくここで日の目を見たんでしょう。
どうでもいいけど、メリルはこんな腸弱人でいいのか。もっといい人いないのか、と思ってしまいました。
ここで満身創痍の雷電が登場するのですが、ここでの雷電はもう気づき始めているんだと思うんですね。
宿命は誰にも代わることができないこと。その人自身が受け入れるしかないということ。
ここまで雷電は、スネークの「やらなければならないこと」を肩代わりしようとして来たのですが、それは自分の意思ではなく、スネークの意思なんですね。
雷電はようやくその意思を尊重したんだと思います。
でも一方で、スネークがすべて背負う必要はないと思っている。
雷電の人生の歪みを正せるのは、歪ませた当人、ソリダスだけなんですね。
でもソリダスはもういない。
それでも引き受けようとするスネークの意思に、雷電は感謝したんだと思いました。
ここでスネークと雷電の物語がエンディングを迎えたように感じました。


サーバールームへと続く、ただただ苦痛だけの道のりは、プレイヤーもかなり辛かったです。
精神的も、指的にも。
ここでのゲームの仕掛けは、狡いなあと感じながらも、思わず感極まってしまいました。
「やらなければならないこと」を、どうしてこんなにボロボロになってまでやろうとするのか。
それは贖罪であると思うのですが、一方では意思でもあるんですね。
自分からそれをやろうと、やり遂げとうと思わなければこんな過酷なことは出来ないと思うのです。
そしてそれは中途半端なものでは、決して成し得ない。
私はその「意思」をソリッド・スネークというキャラクターの背中を見て感じてきました。
MGSからずっと。
セリフでは語られない、また映画のように単に観ているだけでは感じ取れない、
キャラクターを「私」が動かしているからこそ、感じ取れる表現なんだと思います。
ゲームをしていて本当に、本当に良かったと思えた瞬間でした。


ここでようやく、本当にようやっと「終わらせること」が成就します。
スネークとオタコン、そしてナオミの運命がここでエンディングを迎えます。
このために本心を語る事が出来なかったナオミの気持ち、そしてそれを彼女亡き後に受け取ったオタコンの気持ち、
この二つの思いが、互いに互いを強く思いやっているのにその思いを伝えられない切なさが、すごく胸を打ちました。
そしてナオミからスネークにかけられた「もういいのよ。」という言葉。
ここで二人が互いに囚われていた運命が収束したのだと思いました。
スネークがナオミの兄、グレイ・フォックスを殺したことも、ナオミがスネークに復讐しようとしたことも、この許しの言葉で、解き放たれたのでしょう。


リキッドとスネーク、この二人の蛇もとうとうここで本当の最後を迎えます。
MGSと同じように、いやMGから続いて来た、素手での殴り合いという原始的な方法で、決着をつけようとします。
もうこれは世界を背負った男同士の戦いでもなければ、父親への憎悪を転嫁させたものでもなく、互いに互いの存在を刻み付けようとしているに過ぎない、そう思いました。
まるで何かの儀式のように、互いに注射器を打ち込むシーン、このシーンが今回最も、胸が熱くなりました。涙で画面が見えなくなるくらいに。
リキッドにとってのスネークも、スネークにとってのリキッドも、何一つ違わない。
この二人は互いにとっての影であり、自分自身に他ならないのでしょう。
互いに互いの名前を叫ぶだけのシーンで、それを強く感じました。
だからなんの迷いも躊躇いもなく、自分自身へ問いかけるのと同じ理由で拳を叩き付け合うんだと思いました。
そしていつしか、リキッドとスネークという個人を超えて、ネイキッドスネークとオセロットという因縁にも到達します。
敵同士でありながら、お互いを尊敬し合う仲。
ここでは出てこないけど、MGSでグレイ・フォックスとスネークの関係でも語られた、
憎悪や復讐でもなく、また正義でもない、まったくの健全な、まるでスポーツでもするかのような殴り合いなんですね。
それはMGでも語られた、ビッグボスとスネークとの関係でもあります。
勝敗は何も意味しない、まるで会話をするかのように、お互いの身体に拳を埋め合う、その不器用さ、真っ直ぐな気持ちに、ただただ涙が止まりませんでした。


Epilogue: Naked Sin
メリルと大佐ですが、ここでようやくこの親子に本当のエンディングが訪れます。
互いに心を開くにはまだ難しいけれど、それを少しずつ始めて行こうとするメリルの決意、そしてそれを受け入れる大佐の覚悟。
どちらもお互いを偽ることなく真摯に相手に向き合っている、その姿勢がとても素敵でした。
一方、ジャックとローズもエンディングを迎えました。
お互いに怖くて逃げていた守るべきものと向き合うことがようやくここで成就するのですが、ここでも泣きました。
息子、ちゃんと刀持ってるよ。
大佐もただの女たらしじゃないと分かって本当に良かったです(笑)


「僕らは何を失くして、何を守ったんだろう」。オタコンがこう呟くシーンがありますが、
結局、スネークとオタコンがしたことって、サニーを外に出してあげられるようにする事だったと思うんですよね。
小さな女の子を外の世界へエスコートすること、外の世界を知ること。
太陽を見つめながらサニーが「外の世界もいいかも」と微笑む姿で、それが示されているように思いました。
スネークの不在の訳を問うサニーに、オタコンが「スネークは頑張り通しだった。だからゆっくり休む必要があるんだ」と答えるシーンがあります。
ここが一番、泣けました。ほとんど嗚咽で泣きました。
それはやっぱり全編を通して、その「頑張り」を見てきたからに他なりません。
ゲームが表現出来ること、それは言葉や演技だけでなく、キャラクターを操作することによって感じ取れるもの、そういうのもあると思います。
その感じ取った部分を、オタコンという最も近くで見て来た目撃者がこの台詞で代弁しているように感じました。
さて、スネークさんですが。恥ずかしいことに、私は「あの」エンディングで納得してしまいました。
というのも、上の通り、彼は頑張りすぎる程頑張ってきた、だからああいうエンディングがむしろ救いなのかな、と。
もうこれ以上の辛いことは起ってほしくない、そう思ってたのもあります。
だから「あの」エンディングを真っ直ぐに受け止めてしまいました。


Debriefing: Naked Son
『MGSは最後まで気を抜いてはいけない。』
それがMGSからやり続けて来た私なりの心構えだったのですが。
バカか、と。自分、何年MGSやってんのか、と。
最後の最後で「まさか!?」と思わせるのが、MGSでした。そうでした、ええ。
エンディングのクレジットで目を疑い、彼が登場した時にはほとんど笑ってました。
そうスネークにはもう一つ、向き合わなければならない存在があったんですね。
ビッグボス。スネークにとって父親であり兄弟でもある存在。
で、このスネークとビッグボスの声優さんが親子なんですよね。(大塚明夫さんと大塚周夫さん)
この二人が物語って来たこと、それは父と息子の物語なんだと思います。
物語の中で「父」という存在は、「息子」が超えて行かなければならないものとして登場します。
だからビッグボスも息子であるスネークの前に何度も立ちはだかり、そしてスネークも苦悩しながらそれを克服しようとして来ました。
息子が父親を殺す、これが表しているものは、単なる殺伐とした闘争の関係だけではないと思います。
それは、父が息子に、強く在ってほしいと願うことであり、
そして息子にとって父は、いつまでも大きな存在であって欲しいと思うことなのではないかと、そう思いました。
「おまえを息子だと思った事はない。しかし、一人の戦士として、一人の男として尊敬している」
このビッグボスの言葉に、父としての願いが満たされたように感じました。
そして「あんたも無に帰るのか」というスネークの言葉。
銃を捨てるという生き方、それはスネークがこれまでしたことのない、見知らぬ世界なんですね。
常に立ちはだかってきた強大な障壁が、実はもしかしたらそういう未知の世界から息子を守っていたのではないか、
それが取り払われる不安、父の居ないその先の世界へ歩んで行くことの恐れがここに表れているように思いました。
けれど、父は力強く息子の不安を打ち消し、その背を後押します。
「その新しい世界を、蛇としてではなく、人として生きろ」と。
道を示し、去って行くこと。その道を歩んでいくこと。
MGから連なる父と息子の物語は、最後にここに到着したんだと思います。長い殺伐とした時間を経て、ようやく。
最後にビッグボスは微笑みながらこう言い残します。「いいものだな」と。
それは自慢の息子を見つめる眼差しに他なりません。
この終着点には、本当に感動しました。


さて、これでメタルギアソリッドは完結しました。実は発売日までちょっと怖かったのです。
だって、こんなに大好きなのに、これが終わっちゃったらどうするの自分。
真っ白に燃え尽きるんじゃないかと(笑)
だけど、正直なところほっとしました。
ああ、もうあの意味深なエンディングでモヤモヤしなくていいんだ、これでちゃんとすべてがまるく収まったんだ、と。
悲しいとか寂しいとか感じなかったし、今もそう思えません。(いや、この後すごい喪失感に襲われたりするのかしら。それもいいけど)
それはこのMGS4という物語が「終わらせること」に全力をかけたというのもあるし、
ゲームを終えて操作キャラクターとしてのソリッド・スネークは、すべて語り尽くしたんだという実感があったからだと思います。
大佐は言います。「ありがとう、スネーク」と。
エンディングを迎えた時、まさにこの気持ちでした。


このゲームをやって、本当に良かったです。