「メタルギアソリッド4」(前半)

!!! 以下ネタバレを含みます !!!










メタルギアはMGSから続けてやってます。1998年の作品なので、もう10年ですねえ。
メタルギア(1987年)からのファンの方(21年目!)には負けるけど、10年も同じキャラクターで続く一つのストーリーを追いかけて来たら、それはもう当たり前のように思い入れが強いわけで。
しかも「ソリッド・スネーク最後の戦い」と前もっての告知。
去年の発売延期発表から約半年間お預け状態。
これで期待しない方が無理というもの。
6/12発売日当日、ディスクをセットしインストールを終えた後、聞こえて来た「待たせたな!」というお馴染みのあのセリフに、思わず叫びました。
「待ってたよ!」と(笑)


Prologue:
今回MGS4では、無理矢理招集されるでもなく、自分から事件に首を突っ込むのでもなく、世界が放り出した仕事を片付けるためだけに、スネークさんは動員されます。
この冒頭で説明される任務がこれまでのMGSとまったく違うんですね。
これまでの任務にはそれなりの理由がありました。少なくとも誰かにとって意味のあることとして、行動していました。
でも、今回は誰のためでもない、正義や平和を守るといった「大きな理由」がないんですね。
それどころか客観的に観たら、むしろ害を及ぼそうとしている。
理由があるとすれば、リキッドと決着をつけるという、プライベート(私的)なものしかないんです。
誰からも必要とされていないんですね。
それでもスネークさんは、それを引き受けます。
なぜならそれが彼の意思だから。自分が「やらなければならない」こととして、それを全うしようとする意思があるから。
今回のテーマであるこの「意思」。
誰にも渡すことができない、自分だけのものとして、罪と同じくMGS4では描かれています。
この言葉が使われる時に思い出すのは、MGSのグレイ・フォックスの「いつも自分の意思で戦ってきた」という言葉です。
これまでもスネークは、どんな理由であっても「自分の意思で戦って」きました。「大きな理由」のためではなく。
結果として世界を救っただけで、最初からそう思ってはいなかったはず。
この冒頭では、そういう状況や「大きな理由」に左右されない意思が描かれているんだと思います。
だけど観ている側からすると、やっぱりこれまでのような「大きな理由」の無さが寂しく、切なく感じました。


そしてもう一つ、その仕事の依頼をしたのが大佐だということもあると思います。
スネークと大佐の関係では、もう既に上下関係がないにも関わらず、スネークは変わらずに「大佐」と呼び、
大佐もまた、スネークに大きな信頼を置いているんですね。
そういう信頼のある人物からの依頼というだけで、スネークにとっては充分行動の理由に値するんだと思います。
この何年経っても揺るがない強い信頼関係が、冒頭できちんと描かれてて嬉しかったですね。
今回のスネークさんは、老化というどんな人間も逃れようのない重荷を背負っています。
これは単に見た目のインパクトだけじゃなく、スネークさん自身が向き合う「宿命」の表現でもあるんですね。
そしてオープニングの墓地。
ここはMGS3からのオーバーラップを引用した印象づけとして利用されていますが、人間の終着地、墓地からお話が始まるという展開、
そしてスネークさんの老化という終焉を感じさせる要素に、「最後のお話を始めます」という意気込みを感じました。


ACT1: Liquid Sun
最初のエピソードということで、ゲームの説明や操作の慣れなどを考慮してか、ストーリー展開はかなり抑えられていて、攻略の目的が分かりやすいようになっているのが良かったです。
でも単に親切なだけじゃなく、先の展開が気になるリキッドやナオミの謎の行動、メリル率いるラットパトロールとの合同戦、BB部隊の顔見せ、などなど盛りだくさんのサービス精神は健在でした。
さてゲーム開始直後ですが、いきなり激しい戦闘。。。というか人死にすぎ!
かなりのビビリなので横で人が呻きながら死んで行くのがすごく怖くて、さらに月光の凄まじい破壊力に完全にパニックになってしまいました。。。
あの音もすごいけど、爆発の効果で画面がブレたりするのがするのが、迫力ありすぎました。まさに戦々恐々。
あの状況下で「見つからないようにする」って。。。無理だよ。
そしてヒーローの登場シーンですが、カッコよすぎて思わず笑いました。
じいさんなのに、すごくいい動き!
そして段ボールとカムフラのデモシーン。ネタに驚きつつも、もう時代は段ボールじゃないのか、と切ない気持ちになりました。
段ボールにここまで思い入れが出来たのは、すべてこのゲームのおかげ(せい)です(笑)
MGS2では煙草のポイ捨てをオタコンに怒られていたスネークさんですが、ようやく始末をするようになりました。
え、今気づいたけど、今回のお話はいろんな意味で始末をつける物語なんですが、もしかしてこれは暗示?(多分考えすぎ)


MGSをプレイすると必ずなにかしらのお土産(知識)があるのですが、今回はPMCというものが登場しました。
よく知らなかったんですが、これ実在するんですよね。
軍隊のように政治的な意図の為に動員されているのではなく、一企業の「仕事」として戦闘行為を行う、というもの。
これって、戦争行為(殺傷、破壊)がデスクワークや単純作業のレベルまで引き下げられるってことだと思うんですよね。
ドレビンが言う「全人類が代理戦争に加担する」という意味はこういうことなんじゃないかと思います。
このPMCが行っている「仕事」はスネークさんのやろうとしている「やらなければならないこと」とは対極にあって、
PMCは当然企業なので利益を得るために戦闘を行っている一方、スネークさんは最初に「金はいらない」って言っているので利益ではなく(もちろんボランティアというわけでもなく)、
それ以外の為に戦っているんですね。
それ以外のものはなんなのかというと、多分それを語るのがこのMGS4というお話なんだと思います。


オタコンですが、今回はメタルギアMr2からの支援でした。
このメタルギアMr2スナッチャーの形そのままでちょっと嬉しくなりました。
もう今回は、こういう小島作品からの引用があちこちで観られてすごく楽しいです。
今回MGS4は、これまでのようにメタルギアが世界の脅威で、それを破壊するというお話ではないんですね。
メタルギアソリッド」ってタイトルなのに、敵としてのメタルギアが出てこない。
まるでREXの劣化したコピーみたいな月光が出てくるだけで、脅威としてのメタルギアは既にないんです。
代わりに「メタルギア」であるMr2は、兵器ではなく人を助けるための機械として登場します。
MGS3メタルギアとは、「人間と機械を結ぶ金属の歯車」という言い方がされていました。
その意味で言うと、これまで悪い方へ組み合っていた歯車を、なんとか良い方へギアチェンジしたい、
そういうオタコンの切実な願い、「技術の平和利用」が表れているように思いました。


ドレビンですが、システムの裏をつく闇稼業というのが、すごく胡散くさくて好きでした。
戦場で商売しているという点ではPMCと同じなんですけどね。
腹の底が読めない雰囲気なのに、エラーに遭遇して「あれ?おかしいな?」って素直に疑問を顔に出したり、サルと漫才みたいにじゃれあったり。
戦場を散歩するかのようにのらりくらりと渡り歩てるみたいで、危機感がないんですね。
緊張感溢れる戦場で彼に遭遇した時、なんだかほっとしました。
それに飲んでる炭酸がNARC!
身体に悪いイメージが、ポリスノーツのNARCと被ってちょっと面白かったです。


メリルは、MGS以来の登場ですね。
MGSではスネークといい仲になりそうだったのに(ほとんどいい仲だったのに)、変わりましたね。
メリルは、スネークのことを尊敬してたと思うんですけど、それ以前にすごくすごく好きだったと思うんですよね。
でもその「好き」がなくなると、たいてい尊敬も消えてしまうのに(特に女性は「好きじゃない」と自覚すると徹底的に醒めるし)、
それだけは消えてなかったのは、スネークさんが本当に尊敬に値する人だったってことだし、メリルも経験を積んだという事なんでしょう。
そんなメリルを見つめるスネークさんの遠い眼に、娘の成長を見るような寂しいような嬉しいような影が漂ってるように思えました。
メリル率いるラットパトロールですが、エドとジョナサンという、小島ファンなら当然予習済みの「ポリスノーツ」からの二人と、こちらもMGSファンならお馴染みのジョニー一家からアキバという構成。
アキバの腸弱人(ちょうじゃくじん)ぶりがたまらなく面白かったです。
お腹弱いといろいろ大変だよね。。。(笑)
これまでだと、こういう新米キャラを操作するケースが多かったと思うのですが(2の雷電とか)、今回はそういう新規ユーザーの考慮よりもストーリー重視なのが窺えます。
でもMGSの独房戦のように、アキバとスネークのタッグシーンがあったら面白かったのになあ。
ちょうど、合同戦の終盤で他のメンバーが先にエレベータの下に降りてしまった後、二人が残されるシーンがあって、
「あ、ここで独房戦のようになるのかな」とちょっと期待してしまいました。


ラットパトロールを始め全軍で利用されているSOPという設定ですが、これが今回のお話の中ではSF要素を担っているんですね。
経験の浅い兵士を補強するという構想は、MGSではVRで訓練を重ねるという方法で実践されていました。
仮想経験とは言え、経験を積む主体はあくまで人間だったものが、このSOPでは、経験はシステムに蓄積され兵士に分配されるという、
経験を積む主体がシステムに成り代わる、これまでとは逆の方法で実践されるんですね。
そして兵士は、恩恵を受けるためにそのシステムに接続されなければならない。生身の人間がデバイス化するってことだと思います。
それにメリル達が使う、感覚の共有や痛みの制御。
それを外部化することの意味、個々の感覚や痛みは何のために在るのかがまったく問われていないんです。
問うのは違和感を感じる古い人間だけ。
こういう人間のシステム化、管理社会の設定がすごく興味深かったです。
そしてもう一つSF要素というか個人的に最近ちょっと注目しているのが、AR(拡張現実)。
こちらはゲーム中ソリッドアイで表示される、視覚にオーバーラップした情報として活用されます。
これは直接お話には関わってきませんが、ゲーム中かなり便利でよく使ってました。
ほんの10年前までVRVRって言ってたのに、移り変わっていくんだなあ。


さて、今回描かれている管理社会、そのシステムに反抗する人がいないとお話にならないわけでして。
とうとうリキッドの登場です。
この人はいつも自信満々な割に日の目を見ない不幸な人なんですが(笑)、今回はどうなるんだろうとすごくワクワクしました。
ここではさんざん謎の発言だけして去って行った彼ですが、私はこの人の大袈裟な身振り手振りが大好きで、右手をぐーにして威嚇するポーズに思わずにこにこしました。
やっぱり悪役は元気じゃないとね。


ACT2: Solid Sun
冒頭からヴァンプの登場に思わずにこにこしてしまいました。
声は塚本晋也監督。ヴァンプの化け物っぽい容姿にすごく合ってました。
「シャー!」っていう威嚇する声が一番良かったです(笑)
そしてBB部隊からオクトパスの登場でしたが、ボス戦予告を感じてちょっと滅入りましたね。。。
こんなのとどうやって戦うんだ、と。
冒頭の虐殺がすごく怖かったです。
「あー助けてやれない、ごめん」と思いながら素通りしました。
この場面、妙な明るさなんですよね。
たまに映画で、昼に撮ったシーンの明るさを落として、夜のように見せかけるのがあるんですが、そういう感じ。
ちょっと面白いなあと思いました。
序盤は反政府軍に紛れての潜入でしたが、中東編より自由度があるように思いました。
反政府軍との協調もできるし、単独でもいいし。
まぁ反政府軍に追いつけなくて、よくはぐれてましたけども(笑)
また、制圧の度合いで変化する状況がよりはっきりと分かるようになったり、MGSの特徴の一つでもある、攻略の幅が広くて面白かったです。
タワー塔制圧が面白かったなあ。操作はヘタレなのでEASYでしたが。


ナオミですが、この人もMGS以来の登場ですね。
ナオミの存在というのは、スネークさんにとって逃れようのない、向き合うべき「運命の人」なんだと思います。
そしてナオミにとっても、スネークの存在というのは影のように、どうあっても離れないものだと思うんですね。
MGSでは最終的に向き合った彼らですが、今回はその過去が運命として立ちはだかって来ます。
スネークは自身が殺戮兵器となってしまうということとして、ナオミはSOPや人体改造というナノマシン技術の流用として。
この運命の収束=終わらせる事、これが今回スネークさん達が「やらなければならないこと」なんですね。
ナノマシンによって世界中の人がAIに人質に取られる前に、それを阻止すること。
そしてスネークさんは殺戮兵器に変貌する前に自分の命を断たなければならない。
物語上の盛り上げとしてはかなり良かったのですが、ここは観ててかなり辛かったですね。
このスネークとナオミ、そしてオタコンで語られているのが、「終わらせること」で、
MGS4の壮大な物語の中核はこの部分が担っていると思いました。
この言葉にするとたった一言の「終わらせること」、それが「始めること」と同じくらい、
もしかしたらそれ以上の力を必要とするということが、
スネークとオタコンの戦いぶりや、ナオミの行動で描かれていると思いました。
ここで登場する青いバラですが、よく知られているように自然界に青いバラは存在しないんですね。
人工的にしか生まれてこないもの。
これは正にスネークとリキッドという、恐るべき子ども達を表しているんでしょう。


オクトパス戦はかなり楽しかったです。ああいうかくれんぼは好きだなあ。
私が苦手とする移動も少なく(EASYですから)、ちゃんと的になってくれて助かりました。
BB戦では一番楽だったなあ。。。
戦闘後のドレビンのお話が興味深かったです。
BBのエピソードはすべて彼が語るのですが、ちょっと大袈裟な語り口が、ドレビンという胡散臭いキャラクターにぴったりで面白かったです。
すごく残酷な話なのに、妙に面白く聞こえてしまうんだよなあ。


ラッキングですが、これは面白かったですね。
方向音痴なのでかなり迷いましたが、痕跡を比べたり、雷電やオタコンからヒントもらったり、敵兵の思わぬ待ち伏せにびっくりしたり
(あ、これは毎度だ)、いつもと違うルールで進んで行くので楽しかったです。
もしかしたら音にもヒントがあったのかもしれないなあ。あっても分からないけど。
今回も、3の研究所コスプレ潜入みたいな感じの、「敵に見つからないように進む」+独自ルールのゲームプレイがいくつかあって、良かったです。


雷電は、いつの間にかサイボーグになっててびっくりしました。
でも、刃物は忘れてないのね。ヴァンプとの凄まじい早さのアクションは、思わず魅入ってしまいました。
ちょっとやりすぎな感もあるけど、今回主役が老人であまり動かないので(笑)、あのくらいの超人さでいいのかもしれません。
今回の雷電の役割は、ヴァンプとの因縁もありますが、MGSでのグレイ・フォックスの一部も担っていると思うんですね。
だからサイボーグとして登場したのかな、と思いました。
また、これまで導いてくれる者だったスネークが守るべき対象となっていたりと、雷電にとってのスネークが変化しているし、
またローズとの関係も語られるし、一人でいろいろな役割を背負っているように思いました。
2で彼はスネークの導きによって自分の意志で戦う事を選んだんですね。
だから今回、スネークの仕事に自分の意志で協力するのですが、その前に彼はローズから逃げてしまっている。
本来、しなければならないこと、向き合わなければならないことを放り出して、他の事を「しなければならないこと」だと思い込んでるんですね。
そうさせる弱さ、自分の意思のようで実は他の意思にすがってしまう弱い部分がまだ、雷電の中で克服されずに残っていて、
この部分をどうするかということが、雷電とスネークの間で語られていると思いました。


装甲車で脱出するゲームでは、多分ここはかなりこだわりがあったんじゃないかと推測される、ゾンビ兵(正気を失ったPMC)がわらわら出てきて思わずにこにこしました。
ゾンビ映画はよく知らないんですけど、小島監督の映画評では必ずと言っていい程語られてるし、あのユラユラした動きは、古典的なゾンビ映画なんでしょう。
それにヴァンプの不死身っぷりが健在で、それがあまりにもあんまりだったので思わず笑いました。
「ふぬぅ!」って回復した後、何事もなかったように携帯で電話するシーンがすごく良かったです。


後半に続きます。