「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」



ちょっと長かったけど、良かったです。映画の最後に流れるクレジットロールを観ている時に感じる、余韻のような映画でした。


特定の宗教に属していないので天国も地獄もピンと来ない人なんですが、こういう風に死ぬ間際に自分の人生をダイジェストで俯瞰出来たらいいな、と思う事があります。この物語の主人公ベンジャミンは、時間を巻き戻しているかのような人生を歩むのですが、巻き戻しであろうとなかろうと、誰かの人生と交差するということに違いがないんですよね。ただ、時間のベクトルが逆方向を向いているせいで、その出会いがよりいっそう瞬間的だという印象があってすごく良かったです。一瞬しか交差出来ないから、彼にとってすごく大切なことなんだなあと思えました。そういう瞬間的な出会いの素敵な面もありながら、悲しい面もちゃんと盛り込まれていて面白かったですね。デイジーという生涯に渡って関わり合う女性とのエピソードでは、幼少から青年、中年を経て生涯を閉じるまでの、誰かと一緒に生きる楽しさや喜びと苦悩や哀しさがちゃんと説得力を持って描かれているんですね。これ、すごく不思議な感じで、老いて行くことと若返って行くことが巧妙に互いを意味しているんですね。それをこの二人の関係で上手く表現していて、すごいなあと感心してしまいました。
デイジーとのエピソードも良かったのですが、ロシアで出会った人妻とのエピソードがとても素敵でした。人生には、そういう妙なツボのようなものにはまり込んでしまう瞬間ってあるよなあ、と妙に納得してしまいました。だいたいそういう時間って今日と明日の境目である真夜中だったりするっていう所もしっくりするんですよね。眠れない夜というのは、そういうためにあるんだと思うと、なんだかちょっと楽しい気分になりました。そういう人生の「おまけ」的な意味で挿入された雷に打たれた男性のエピソードがとても楽しかったです。