「宇宙へ。」



NASA設立50周年の歴史を綴った壮大なドキュメンタリー。何度も何度も失敗を繰り返し、その中から少しずつ前進して行く様子が、とても感動的でした。設立初期の飛行が安定しないロケットや爆発などの様子を見ていると、ふとアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり*1というSFに出てくるオーバーロードを思い出しました。物語の中で人類の「保護者」として幼い人類を見守るオーバーロード達は、こんな風にやきもきしながら見守っていたのかも。


「事実」を繋ぎ合わせて作るドキュメンタリーにしか出せない面白さ、「これは本当にあったことなんだ」という絶対のリアリティを巧みに編集し、ナレーションや音楽を加えて、きちんと映画としての起伏を描いていて面白かったです。今回、ナレーションが宮迫さんだったんですが、抑えた調子が少し煽り気味の音楽と上手く合っていました。
世代としては、スペースシャトルなんですが、それ以前のロケットのシークエンスが興味深かったです。当時、ロケットを制御するコンピュータの性能は8ビットだったそうです。昨今64ビットマシンが普及し始めている現在から見ると、そんな低いスペックの機械に命を賭けることが本当に危なっかしく、また宇宙服の性能も恐らく現在よりもかなり劣っているような様子に、どきどきしながら観ました。宇宙は地球上の自然以上に、人智を尽くしてもどうにも出来ない世界で、だから人間はテクノロジー武装して宇宙に赴きます。それでも、どんなに緻密に計算してもたった一つのミスがクルーの命を奪って行く。映画全体を通して人間の肉体としての脆弱さと、それでも宇宙に行くんだという精神の強さがうかがわれて、とても良かったです。

*1:NASAが設立される5年も前の1953年の作品だというのがまたすごいんですが