「ミレニアム2 火と戯れる女」

雑誌「ミレニアム」の記者ミカエルと、天才ハッカーリスベットの二人が複雑に絡み合う事件の謎を、それぞれの方法で解いて行くミステリー。

前回の「ドラゴンタトゥーの女」では、孤島から突如として失踪した女性を追う、というミステリーの王道的な展開があり、その中で男性の性の凶暴さ、邪悪さという面をテーマに組み込んでいたのではないかと思います。今回は、ミステリーの比重が軽くなり、前回の暴力的な性としての男性というテーマを掘り下げた感じでした。主人公リスベットの謎めいた人生がミステリーの主軸となり、この謎をミカエルが追いかけ、リスベット自身の宿命的な邪悪なる男性との戦いがテーマを表現しているんですね。
このミカエルという男性が、リスベットにとって数少ない「暴力的ではない」男性という位置づけで、リスベットが悪夢にうなされる度に、この人は彼女をこちら側へつなぎ止めている細い糸なんだと、何度も思いました。で、そういう男性なら彼女への想いがあるし禁欲的なのかなと想像するんですが、普通に上司とセックスするんですよね。お昼休みとかに。なんだろう、この辺の感覚がすごく独特で、さらっと悪気なく描いているんですよ。そして登場する人たち皆、性欲があるという感じがすごくするんですよね。色気がある、というのとまた別で、食欲と同列にさりげなく性欲が置かれている感覚。日本の表現方法ではこういうのはなかなか観たことがない。セクシーさを出さずに性欲だけがむきだしでぽんと置かれている感じ。すごく独特だなあ。独特といえば、劇中に何度かリスベットの裸体が出て来るのですが、この身体がすごく不思議な魅力があるんですよね。少年のように骨張っているのに、女性のような曲線があり、アンバランスに男性のような筋肉を備えているっていう。色気があるというよりも、すごく繊細な彫刻を見ているような感じがして素敵でした。
それにしてもこの映画の中での凶暴な性としての男性の位置づけがすごく怖いんですよね。ミカエルがリスベットの「トラウマ」を目撃するシーンがあるのですが、その時の彼からは怒りと悲しみと供に、どことなく恐れも現れていたように思いました。男性が潜在的に持っている、女性を傷つけたいという強い願望を刺激されたみたいに。彼自身はリスベットの謎を追いかけていく役割の中で、彼女を受け入れられるかどうかを自分自身に問うているようなところがあるように思うんですね。まあその割には他の人と寝ちゃうんだけど。
一方リスベットの方は、奪われたものを奪い返すために戦っているように思いました。何を持って生まれたかを決めることはできないけど、ある程度幸せになれたはずの未来が搾取された時、彼女は諦めるのではなく戦うことを選んだ人なんでしょうね。だからか、すごく心が痛むシーンがたくさん出てくるのですが、そういう中でこそ彼女の激情が火の粉のようにきらきらしていてとても美しいなと感じました。それにしてもこんなに顔面をぐちゃぐちゃにして戦うヒロインは観た事がないわ。すごく危機迫っていて良かったです。すぐに3も公開になるし、楽しみだなー。