「ぼくのエリ 200歳の少女」

ホラー映画だと聞いていてかなりびびりながら観に行ったのですが、思ったよりも大丈夫でした。ちなみに私のホラー耐久度は『バタリアンが観れる程度』です。低いよ。

いじめられっこのオスカーは、隣に引っ越して来た少女エリと仲良くなる。しかしエリには人には言えない秘密があった。

子どものある一時期に、特定の友だちとしか遊ばない時期というのがあるそうです。友だちと自分だけの世界。それはいじめっ子や怖い先生がいなくて、誰も二人の仲を邪魔することのない、子どもの狭い世界感に切り取られた、ただひたすら甘く優しい幻想です。しかし現実には、いじめっこは毎日のように悪戯してくるし、親にはそんなこと言えない。誰にも言えない憎悪は心の中で降り積もって、惨めな殺意が生まれて行く。この映画はそういう現実世界から幻想世界への切り取りに、ホラーという手法を持ち込んだのではないかと思います。このエリという少女は、主人公オスカーを幻想世界へと切り取るナイフであると同時に、子どもの狭い幻想世界の友だちでもあるのでしょう。そしてそれは、大人の言葉で言うと恋人です。子どもだけの濃密な戯れの時間を、大人にとって理想的な恋人との過ごし方に当てはめている、そういう物語のように思いました。
それとこの映画は時間感覚がとても独特で、時間が単に早さ、スピード感を表している都市の映画の感覚ではないんですよね。都市の映画でこの時間感覚では間伸びてしまう。雪の積もる地域に住んでいる人なら分かると思うのですが、雪が静かに降り積もるような時間の感覚なのかなという気がします。うーん、同じ地方でも、南国の喜びも悲しみもさらさら流れてしまうような感じとも違う気がするんですよね。単に映画の風景がそう感じさせているのかもしれないんですけど。一度、こういう異なる時間感覚の映画を集めてみたら面白いかもしれないですね。