キックアス

平凡すぎるほど平凡な高校生デイブは、無力で無関心な日々をどうにかしようと自分で思いついたアメコミ(アメリカン・コミック)ヒーロー「キックアス」になりきって自警活動を始める。しかしコスチュームの中は「ただの人」の彼の活動は裏目に出るばかり。そんな惨めな「キックアス」の前にホンモノの(どっかで見たことある)ヒーロー「ビックダディ」とキュートな「ヒットガール」が現れた!

「つっこみ」ってある意味快楽なんだと思うんですよ。隙があると人はつっこまずにはいられないって、やっぱり本能的に楽しいからなんじゃないかな。んで、この映画にはほんとにまあってなくらい、いっぱいつっこみました。主に「間違ってる!」と。主人公の高校生にもなって「ヒーローになる!」っていうばかな決断にも、あとはネタバレしちゃうから書かないけどいろいろと「おいおい!」と思うようなつっこみどころが盛りだくさんで、なんていうか当たりやすい的が向こうからふらふらやって来るのを撃ち落とすかのような爽快感さえ覚えるほど。つまりすごく面白かった!なんていうんだろう、こんなに自分の中でつっこみ欲求が溜まっていたのかとびっくりしたけど、それを上手く笑いの方に引き出す力が映画の中にあるんですよね。

ただこの映画は単におばかなことだけやって笑わせてるだけじゃないと思うんですよね。主人公のデイブの決断はほんとうに愚かで間違いだらけのようにしか見えないんですが、彼にはその選択肢が絶対なんですよね。すごく自分の心に正直なんですよ。まあ十代なりにいろいろ邪な裏心はあるんですが、間違いだと分別をつける前に心に従っているように思うんですよ。そしてこれはデイブだけでなく、この映画の登場人物すべて世間的なつっこみなんて蹴り飛ばして、やりたいようにやってる。この映画が映画たり得ているのは、「ヒーローになりたくてもなれない」ということではなく、「ヒーローじゃなくてもやりたいようにやれる」っていうことなんじゃないかな、と思います。だからなんだか観てて楽しくなってくるし、あたかもヒーローものを観終わった後のように「なんだかやれそう!」な気分にさせてくれる。

たぶんこの映画を観たら「登場人物で一番すごいのはヒットガール!」ってみんな答えると思いますね。もちろん私も。彼女のアクションの素晴らしさは誰もが認めるところだと思うのですが、私が一番感心したのは小さな身体から繰り出される技でも、Fワード(侮蔑的表現)満載のセリフでもなく、彼女の口元がバットマンと同じく野蛮なあひる口になっていたことでした。なんていうの漫画「ろくでなしブルース」とかで見かけるんだけど、あの口元。そこに私はこの映画の中で唯一正しさを感じたのです(笑)