Looper

あらすじ
タイムトラベルが可能となった近未来。時間旅行は違法とされたが、闇社会では不都合な人間を始末するため、その人間を過去に送り、待ち受ける通称「ルーパー」がその時間には存在しない人間を殺し痕跡を消去していた。ルーパーとして順調に、しかし心に満たされないものを抱えながら生きて来たジョーは、ある日未来の自分自身が送り込まれる事態に遭遇する。それは闇社会が使う「ループを閉じる」という手法だった。残りの時間を自由に暮らせるだけの金(きん)を抱いた老いた自分が目の前に現れた時、ジョーは判断を迫られる。


説明するまでもないアクション俳優ブルース・ウィリスと、ダークナイトライジングなどに出演するジョセフ・ゴードン・レヴィット(以下JGL)の二人が対峙する、時間SFアクション。アクションですがわりとブルース・ウィリスとJGLの二人の演じるキャラクターがきちんと描かれていたり(アクション映画にありがちな典型キャラで押し切ることなく、という意味でね)、繰り返しのシークエンス(特にジョーが送る日々を描いたパート)が手際よくコンパクトに収まっていたり、アクション映画なのにすごく安全な場所(サトウキビ畑)でアクション展開してたり、ちょっと変わった映画だなあという印象でした。近未来という割には荒廃している以外に普通だし。あと近未来でもバイクが空飛ぶのはどうかな。じゃあなんで車は飛ばないのかって話になってしまうんだけど、車が空を飛ぶと今度はデロリアンかってことになるのでもういいです。でもこの二人の役者の演技はとても良かったんですよね。特に田舎のダイナーで向かい合って座っているシーン。(ここも近未来設定でなんで80年代くらいから変化してそうもないダイナーなのか…)充分に経験を積んで年老いた自分と、血気盛んで反抗心の塊のような自分との対話は、若い側から見れば「こんな老いぼれにはなりたくない!」という否定であるし、老いた側から見れば「こんな浅はかで軽率じゃなかった!」という否定で、このお互いに角突き合わせるガリガリした感じがよく出ていたとおもいます。

それにこれは過去の自分は他人も同然だと言うことでもあるんですよね。自分という一貫性のある主体があると信じていても、未来のあるいは過去の自分と今の自分は考え方も性格も変わってしまう。それでもその主体の根拠になるのは、身体という主体とは関係なく存在するものなんですよね。それを傷という側面から描いたのは面白かったですね。


!!! ネタバレ !!!








このストーリー、タイトルどおりループの中に巻き込まれた人=ジョーの物語なんですよね。老いた自分、若い自分、そして幼い自分。この三者がタイムトラベルによって生み出してしまった無限の循環を、いかにブレイクするかという物語でした。その方法は、若い自分が存在を滅することで老いた自分を消去し幼い自分の未来を変えるというものでした。ここ最近タイムリープもののゲームとかやってたせいか、途中で気づいてしまいましたね。それとその結論が帰結するエンディングもまあそれ以外はないだろうな、と。予測できる内容でしたが、演技や展開がなかなかスリリングでとても面白く観たのですが、やっぱり時間SFを読んだりしてるとこの人物は過去の自分じゃないかなーとついつい疑いを持ちながら観てしまうので、あんまり読み過ぎ(遊び過ぎ)るのもどうなのかなとおもいます…。まあそれはいいとして、この今の自分を犠牲にすることで別の時間線の自分を守る、という展開は、言ってみればもう一度物語をやり直すということだと思うんですね。でも今度はただの繰り返しじゃない。無限のループをブレイクした後のその向こうの、白紙へと自分を送り出したということなんですよね。自死という自分の物語のピリオドから始まる物語。バットエンドが導く推定ハッピーエンド。その儚い希望がとても魅力的でした。