Ted

あらすじ

誰からも相手にされないひとりぼっちのジョンは、クリスマスにテディベアのぬいぐるみをプレゼントされ大喜び。それ以来テッドと名付け唯一の友だちとして過ごしてきた。けれどテッドはあくまでぬいぐるみ。本当の友だちのようにおしゃべりしたり歩いたりできるわけじゃない。それでもジョンはひたすらにテッドが本当のお友達になりますようにと祈り続けた。そして天はその純真な少年の願いを叶えた。
それから20年以上が過ぎ、30代になったジョンは相変わらずテッドと一緒。ドラッグとセックスに溺れすっかり堕落しきったテッドとジョンはそれでもだめだめな人生を謳歌していたが、ジョンにとびきり美人の恋人ができたことでその関係は変化し始める。

おやまあ。初っぱなからひどい英語の連発で、普段英会話教室じゃぜったいに使えない(笑)言葉の洪水に若干引きましたが慣れました。そっか、ネイティブはこんな感じで使うのかー。まあそれはいいとして。

オタクが普通に結婚するのはとても大変だろうと思うんですよね。旦那さんが趣味で集めたものを邪魔だと思って奥さんが捨ててしまったら、旦那さんが腑抜けになって困った、なんていうスレ、ありますよね。これが本当かどうかはさておき、オタクの側の主張は「命の次に大事にしているコレクションを勝手に捨てるなんてヒドい!」ていう感じで、うん、分かります。私はあまりコレクションには興味がない方だけど、先日写真を載せたMG REX、あれね、さすがに結婚してたら買わなかったとおもいます。でかくて場所取るし、なにより金額…。オタク趣味と結婚生活って、結婚してなくても困難を極めるだろうなあというのは想像に難くないんですよね。ある程度理解を示していても、やっぱり自分に興味のないものが生活圏に入り込んでくるわけで、どうしたって邪魔なものは邪魔!と思う気持ちもよくわかります。

で、この映画では、そのオタク趣味そのものがテッドというキャラクターで表現されているのではないかと思うんですね。そしてそれにどっぷり浸かりきってしまっているのがジョンで、そのジョンとなんとか結婚しようとするのがロリー(ミラ・クニス)なのではないか。ロリーは普通の大人の女性で、このだめな大人のジョンとそれなりに普通に生活したいってだけなんですよね。でもそれを邪魔しているのがテッドという存在で、こどもの頃からテッドに頼りきりなジョンはテッドと離れることができない。テッドにしてみてもジョンはどこか面倒を見なければならない弟のような存在だったのかも。それは多分ロリーも一緒で、ジョンのそういうちょっとだめなところ、だめだと自覚してるからあまり気負わずまったり生きてるところがリラックスできて好きなんじゃないかなあ。なんかキャリア持ちでかつ美人がこんなだめ男に惹かれるっていうとぜんぜん説得力ないんだけど、その辺をミラ・クニスはすごく上手く演技に落としこんでる感じですごく良かったですね。
でもそれぞれの関係の中に価値はあっても、それ以外の部分、特にテッドとロリーの関係にはそういうものがまったくない。お互いにジョンをたぶらかす(笑)敵だと思ってる。でもこの映画のすごいところって、普通どちらか一方に傾く関係性を奇跡的なバランスで着地させてるところなんですよね。

そうこの映画は、「オタクなんてやめて大人になりなさい!」なんて切り捨てもしないし「オタクの何が悪い!」と開き直りもしない、どちらも歩み寄ってなんとか道を探して行こうよ、とちゃんと「大人の」着地点に落ち着くんですよね。ロリーの苦労はこれからも続くだろうし、ジョンはテッドといつまでもくだらないおしゃべりをするんだろうけど、この三者の中にそれぞれの価値がきちんと存在しているからまあ大丈夫なんでしょ。

この映画、幼児体型でデカい目がカワイイけど中身おっさんの「宇宙人ポール」に近いかなあと思ったけど、「宇宙人ポール」はオタク讃歌である一方、こちらは一般とオタクの歩み寄りの物語かなあとおもいました。それと友情と結婚、どっちが大事なの?という主題は、男版「ブライズメイズ」でもあるかも。
そしてこのだめな大人のジョンを演じたマーク・ウォールバーグ、この人「ザ・ファイター」で無口でストイックなボクサーを演じた人かあ。なんかすごく観たことあるなあと思ってたけど、あの演技とは全然対称的で気づかなかった。だめっぷりの中にも、恋人に向き合う姿勢が真摯ですごく良かったです。あと、久しぶりにスクリーンでノラ・ジョーンズ観たなあ。「マイ・ブルーベリー・ナイツ」以来だわ。もっと映画出ればいいのに。