エンダーのゲーム



同名のSF小説の映画化作品です。


あらすじ
人類に敵対する異星人フォーミック(原作では虫を意味するバガー)を殲滅するべく、人類はその軍事力を統括する天才を求めていた。エンダーはその名のとおりこの戦争を終わらせるために生まれて来た。彼のゲームの才能を見抜いたグラッフ大佐は、エンダーをバトルスクールに勧誘する。ゲームの天才、エンダーはフォーミックとの戦闘シミュレーションに没頭し才能を開花させていくが、一方でなぜフォーミックが一度の侵略以後沈黙を守っているのか、疑問に思い始める。



これだ!と思った。宇宙空間にあるバトルスクールで、チームごとに分けて行われる無重力でのゲームのシーンは原作を読んで想像したとおりでした。ちょっとレトロなバトルスーツも良かった。無重力ならではの緩やかさとその空間を切り裂いて行くビームガン、障害物をいかに上手く使うかで有利・不利が決定する状況がダイナミックに描かれていてすごく楽しかったです。ただ、ゲームじたいの流れを細かく描いてはいなかったんですよね。そこが少し不満なところなんですが、こういうのは映画の「マルドゥック・スクランブル」シリーズでもポーカーのゲーム展開を描くよりも、全体の流れを描く方に注力していて、そういう感じに近いなと思いました。映像でゲーム展開を描くと言えば、映画「世界侵略 ロサンゼルス決戦」なんかがまるでFPSゲームのような展開で、どういう戦略をとるか、戦況がどうなっているかをしっかりと描いた作品だと思います。ただね、そのゲームのレベルをがっつり描くとシナリオがなんか薄っぺらい感じになってしまうんだよね。映画「バトルシップ」もそう。ゲームの詳細がどうなっているかという描写はさらっと、ゲームがどうすごいか、エンダーがいかに天才なのかという部分に注力してそれなりの説得力をうまく付け加えていたと思います。エンダーがゲームを支配する万能感がよく出ていて、観ているこっちも楽しかったですね。
原作と比べてかなりディテールを落としている構成で、原作を読んでから見るとかなりごっそりなくなっているエピソードや設定があって少し残念ですが、ゲームがなんであるか、ゲームをクリアすることの意味など原作のテーマを重視した構成にしなおしている点はすごくきれいにまとまっていると思いました。けっこうなボリュームだからね。むしろ原作はテレビシリーズ向きなんじゃないかな。
映画でもライバルたちとの葛藤や協調が描かれていましたが、どちらかというとグラッフ大佐という父性と、エンダーという少年の戦いの物語でもあったのかなと思いました。頭ごなしに命令を下し、人類にとっての安全だけを考えるグラッフ大佐に対して、エンダーは命令に従うことしかできません。でも彼は自分自身で答えを出そうとするんですね。本当に人類にとって最良の答えの出し方とはなんなのか、ということを。ゲームを終わらせることが使命の少年は、本当に自分自身の「ゲーム」を終わらせて旅立って行きます。その時のエンダーの顔はもう少年ではなかった。一人の大人として彼はもう一つの戦うことしか選べなかった父性に打ち勝ったのだと思います。



テーマとは別として、最後の一機でラスボスを、初見で倒すという緊張感、盛り上がりがすごく良かったです。最終戦のエンダーが腕を振ると戦艦がぐわーっと向きを変えるシーンは、ゲームを完全にコントロールするエンダーの力が目に見えるようですごくわくわくしましたね。しかしこんな状況、ぜったい正座してコントローラー握る手汗ぬぐうわ(笑)



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