SFマガジン700【国内篇】 (創刊700号記念アンソロジー)
- 作者: 大森望
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: 文庫
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SFマガジン創刊700号を記念して集められたSF短編アンソロジーです。一言で言えば珠玉が集まった感じ。毎年発売される年刊SFとも違う、そして「これがSF!」というのともちょっと違う、文芸の楽しさに拠った作品集じゃないかなと思います。漫画は漫画の面白さがそのままストレートに楽しめる感じですね。あまりSF読まない人にもおすすめできそうです。いくつか印象に残った作品の感想を。
- 夜の記憶(貴志祐介)
ミステリーで有名な貴志祐介さんのSF短編。SF的なネタも楽しいけどやっぱりこの人、文章がとても上手くて思わず読んでしまいますね。交互に語られるエピソードがやがて一つの背景に結びつく構成が見事です。暗いイメージがとても素敵でした。
- 幽かな効能、機能・効果・検出(神林長平)
ここ最近、この人の作品をよく読んでるんですが、こういう言葉にしにくいことをよく物語にできるなあと感心してしまいますね。人間の認知の限界の外側にあるものを捕らえるにはどうすればいいのか。その試行錯誤がどたばたしていて楽しい作品でした。そしてコンビものでもあるのですが、これを読んでてアシモフの「我はロボット」に出てくる技術者コンビを思い出しました。コンビものっていいよね。
- 海原の用心棒(秋山瑞人)
前に「猫の地球儀」を読んだ時も「これはすごい!」と思ったけど、これもすごかったですね。なんといっても読みやすい。かなりのページ数だと思うんですがすいすいと読んでしまう。そして何より物語が熱い!過去の出来事を回想で語る構成ですが、その語りの主眼を通して見た出来事が淡々としていながらひしひしと熱いものが伝わってくるんですよね。彼らはなんのために戦っていたのか、戦うということにどんな意味があるのか。惨劇のなかにも鋼鉄の塊にも、そこに意味を読み出すことは不可能じゃない。そんな闘志を感じる作品でした。おすすめ!
他にも、何も起こらない、起しちゃいけないタイムリープもの「Four Seasons 3.25」(円城塔)とか、設定された事柄を曲げずにそのまま物語ったら、めちゃくちゃエキセントリックでキュートな話になった「さいたまチェーンソー少女」(桜坂洋)とか面白かったですね。