SFマガジン700 海外編


こちらも珠玉の作品集。テッド・チャンとイーガンが同時に収録されてるなんて夢のようだ…。テッド・チャンはこれまで書籍化のなかった「息吹」が収録されています。とても素敵な物語なので未読の方はぜひ。イーガンの「対照(シンメトリー)」は珍しく分かりやすく噛み砕いた作品でした。な、なんとなく分かる…。

「闇の左手」のサイドストーリー的な物語。固有の文化を持つ種族を理解するためには、その種族に「なる」こと、文化と言葉との関係などを描いています。ちょっと前にアマゾン川流域の少数民族の言語を紹介したノンフィクションを読みましたが、これとちょっと似ていますね。そういう言語SF的なものを包括しながら、母と娘との関係が描かれている作品でした。母親はなぜ娘を束縛するのか、なぜ女性は他の女性と折り合えないことがあるのか。そういうものを架空の文化でもって語った作品だと思います。なんていうか、女性って基本的にスタンドアローンだよね。

なんにもない場所、なんにもない人生。それでも想像力だけはいつでもそこにある。想像力で救われるっていうのは、本を読んでいていつも思うことです。私は誰かの想像力で生かされているなって。

「第六ポンプ」(同著者の短編集)でも似たようなモチーフのストーリーはあったけど、わりとストレートに警告しているようなところがあって良かったです。まああんまりこういうのは茶化したりするといろいろ問題になりそうだけど。このストーリーはフィクションとして楽しむけど、自分の便利さや利益のために何かを代償にしていることってあるよなあ、とちょっとうーん…となる作品でした。できれば小さいものには優しい人でいたいですね。