いま集合的無意識を、


いくつか印象に残った作品の感想を。

  • 切り落とし

バラバラ死体事件の犯人を追いかけているつもりが、なぜか内面世界の話になっていく…って書くとなんだか面白くなさそうに見えるけど、なんだか読んでしまう不思議な魅力がある文体が素敵です。これはあれかな、「ぼくらは都市を愛していた」とも少しかかるようなところがあるんじゃないかな。

  • 自・我・像

人間の身体ではなく心を模したアンドロイドという発想がとてもユニークで楽しいです。そのアンドロイドが創作を始めてしまった…という物語。表題の無意識というテーマも含みながら、物語はどこから生まれてくるのか、無意識からそれが生まれることは可能なのだろうか、といった意識や言語をベースとしたSFでもあります。いやーこんな短い中にぎゅーっと詰め込まれててすごいよ。

  • かくも無数の悲鳴

ゲームの、サイコロの話…だと思うんだけど。ゲームって私の場合はビデオゲームをイメージするんですが、まあその主人公が何度もリトライで生まれては死ぬ世界のなかで、一つの可能性だけに収束する、という物語、かな。あ、ちょっと理解が及ばない時は引用だ。

「なんでもあり、では、話にならない。いまとは別の人生がある、しかも無数に、なんていうのが証明されたら生きているという実感を人類は失う。(中略)どこか別の平行宇宙で生きている自分がいるなんてのは幻想だと、思い知らせてやる」

なんだかよく分からないけど、この人の作品には妙なところで自信たっぷりなヒーローが出てきて、それがまたなんだかよく分からないけどかっこいいんですよね。面白かったです。