チャッピー

なんていうか、凄かった。SF的にはそんなに新しいことはしてないのに、ロボットの周囲を変えるだけでこんなに新鮮なヴィジョンが浮かび上がるなんて。自意識を持ったロボット、チャッピーを取り囲むのは、劣悪な環境と劣悪な人間です。いやね、劣悪なんて言葉を使ってるけどね、出てくる人間あますことなくみんなクズなんだよ(笑)エブリバティくずだよ!そして機械はある程度クリーンな環境でなければパフォーマンスをきちんと発揮できないところが、めちゃくちゃ汚い埃や泥や、なんなら動物の死骸がそこら辺に転がってるような場所でもっとも繊細な部分である電脳が丸出し。いやーやめてー!
この着眼点がまず面白かったですね。そういう意味で言うとこのロボット、チャッピーは人間のメタファーで、個体の力ではどうにもならない劣悪な環境を与えられた運命を背負わされているんですね。でもそこはやっぱり人間と機械は異なるわけで、その差分がチャッピーの純粋さとして浮かび上がってくる。彼の純粋さというのは機械的な盲目なんだけど、観ている人間側にはそれが子どものような純粋さ、そしてその純粋さ故に様々なことに染まりやすいナイーブなものとして映るんですよね。見事にロボットに感情移入させられました。そしてその感情移入をうまく煽るのが、神以外が知的生命体を創造することなど許さん!というムーア(ヒュー・ジャックマン)なんですね。いやーほんと、このキャラが爆発寸前の本音を押し隠しているところなんかいつ暴挙に出るかと思ってハラハラしましたね。うまいんだよね、そういうギリギリ感が。
彼は潜在的に人工物に知性が宿ることへ恐怖を感じていると思うんですよね。私はわりと面白がってしまうのでそういう恐怖はよく分からないけど、それでも突然意図しない挙動をし出したらもしそれが制御不能であったら、怖いと感じるはずなんですよね。ヒトのかたちをしているならなおさら。車だって運転している時は信頼し切っているけど、もしブレーキが利かなくなったら怖いですよね。人間はたぶん、多かれ少なかれ機械に対して恐怖を持ってる、ということは忘れてはいけないと改めて思いましたね。