マリーゴールド・ホテル 幸せへの第二章

前作でほとんど詐欺に近いかたちで長期滞在型のマリーゴールド・ホテルに集まった面々の、その後の物語。

前作がすごく良かったので観てきました。前作が人生の終わり頃に迎えた精算と再スタートの物語だったのに対し、今作は更に次のステップへ、というお話。でもマリーゴールド・ホテルのメンバー達は朝の点呼で生存確認(笑)をしなければならないほどの高齢者。まだ若い支配人のソニーのように明日も今日と同じように生活できない可能性のほうが高い。けれどそのタイムリミットがシナリオにいい意味で活かされているんですよね。主婦で会社務めをしたことのないイヴリンには昇進の話が舞い込み、仮面夫婦の生活を長く続けて来てようやく別離を選んだダグラスは次の伴侶を意識し始め、遊び人だったノーマンは心に決めた女性を信用できずに悩み、恋多き女性マッジは二人の求婚者にもどこか空虚な気持ちを抱えていて、ミュリエルは下半身の手術後に歩けるようにはなったものの体力的に限界を感じ始めていて。これが若い頃なら少し時間を置いて想いっきり悩んだりできるんですが、彼らは迷っている暇がありません。
この映画、前作も面白いと感じたのは年老いた人々を描いているのにも関らず、感じていたり考えていることが若い世代や人種とは関係がないことなんですよね。誰だって初めての会社務めは緊張するし、見知らぬ人々には物怖じするし、女性とみれば声をかけたくなるのは…まあそんなもんだろうし。演じている役者たちは老いているけれど、なんだかふとした瞬間に自分の年代に一致した顔が見える時があるんですよね。このバランスが素晴らしくて、どの年代にも通用する描き方がすごくいいんですよね。


今作では元メイドでマリーゴールド・ホテルではマネージャーを務めるミュリエルがとても良かったです。最後に結婚もせず仕事一筋だった彼女に訪れる出会いがよかった。なんだろうね、人生のどの瞬間にも変化は必ず訪れるものなのかも、とそんな風に思えました。