シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ


観てきました。キャプテン・アメリカとアイアンマン、2大ヒーロー対決!今年のアメコミムービーは先月の「バットマン VS スーパーマン」に続いて、敵との戦いではなくヒーローどうしの決闘が描かれています。


さて。作品は「キャプテン・アメリカ」のシリーズ最新作ですが、お話はマーベルヒーロー大集合の「アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン」のその後となっています。


ちょっとだけあらすじ。
世界の平和を守るために集まったはずのアベンジャーズ。しかしその過ぎた力は各国には脅威として映り、国連の監視下に入るように半ば強制される。AOUの一件以来、己の恐怖心につけこまれ、個人がいかに信用ならないか思い知ったトニー(アイアンマン)はその提案を受け入れるが、自由意志としての正義を重んじるスティーブ(キャプテン・アメリカ)は否定する。しかし国連を狙ったテロ事件が勃発、スティーブの旧友、ウィンター・ソルジャーが容疑者として浮かび、友人を救うためにスティーブは活動自粛を取りやめて戦いを始めてしまう。


力を持つ者はその意思において正義を為すべき、というキャプテン・アメリカ。人の手に余る力(技術)は集団が意思を決定するべき、なアイアンマン。どちらも理解できるし、現実的には私は後者かな。でも現実でもフィクションでも、大切なのは「どういう筋書きになるか」という想像力だと思うんですよね。ヒーローの大事な要素のひとつは「間に合うこと」。人の危機にギリギリでも(むしろギリギリの方が盛り上がるんだけどw)間に合って助け出すこと。でもヒーローという個人ではどうしても間に合わないことがある。どんなに力が強くても、どんなに素早く動けても、力が個人に属している以上限界というものがあります。それを補完したのがアベンジャーズ。彼らは間に合う。一人が遅れても、カバーできる他が居るから。でも、それでもやっぱり個人の集まりである以上、できることとできないことがあるんですよね。
その「できないこと」にヒーローはどう対処するべきなのか。キャプテン・アメリカはできないことを引き受けようとしたのではないかと思うんですよね。一方で、エンジニアの特質として傲慢なアイアンマンは、できないことを認めない。
ヒーローたちはそれでいいかもしれないけど、助けられる側の普通の人から見たらどうだろう。キャプテン・アメリカに間に合わなかった、と謝られても納得できるかな。それならいっそ、怒りのぶつけようがない大勢の救助隊の方がましかな。
助けが間に合わなかった人たち、救助のために振るわれた力でとばっちりを食った人たち。ヒーローが活躍すればするほど賞賛と共に憎悪が増えていく。ヒーローたちはその憎悪とどう向かい合うかを問われるんですね。
でもね、やっぱりヒーローという存在があるとするなら、どんな結果でもヒーロー自身が決断して欲しいと思う。だってその方がこっちも怒りがいがあるものね。物語のかけらもない集合的意思で殺されたら、なんだかすごく虚しいような気がする。


アクションについて。
AOUではなんだか冒頭から気だるげな感じがしてイマイチのれなかったのですが、今作は最初っからキレキレのアクションが素晴らしいです。地上と空中からの追撃、肉弾戦のスティーブとロマノフ、空中からの鋭い一撃のファルコン、華奢でワンピースがかわいいのに攻撃がえげつなく強い(笑)テレキネシス使いのスカーレット・ウィッチ。きちんと呼吸を合わせて連携している描写が最高にかっこいいんですよね。それでいて個々の魅力をクロースアップするカットも忘れてないし。そして何より看板背負ってるキャップのマッチョシーンがやばい。コスチュームの時はあまり目立たないけど、腕の筋肉もりもりーっと盛り上がるシーンは、思わず拍手したくなるほどのキレッキレのマッスルでございました。
それと全員がそろって正面からぶつかり合うシーン、ほんっと最高。ここはストーリーのシリアス展開から一転、おちゃらけたアクションも盛り込みつつ(主にコメディ担当はアントマン)、滅多にお目にかかれないヒーローたちの対決シーンを堪能しました。
なにより私の一番のお気に入りのキャラ、ホークアイさんが今作ではキャップチームで、これまた私の大好きなキャラ、アイアンマンと対決があったんですが、喧嘩はやめて、いやいや、いいぞーもっとやれー!
もうアイアンマンという強敵を前にしても余裕のホークアイが最高すぎる。この人ねえ、弓が得意なだけの普通の人なんだよ。全然超人とかじゃないのに、もう心意気がヒーローなのよ。他のヒーローに比べてあまりに差がありすぎるからスカーレットがだいたい補強してるんだけど、そんなことはどうでもいいのよ。映画全体から見たら登場シーンが少なくて、やや、いや、かなり不満だけど、ほんと登場してくれてありがとう。奥さんと子どもいるけど(まだ引きずってる)


以下ネタバレ






「ヒーローたちを勘違いさせて同士討ちをさせる」、という意図を持った人物が配置されている部分については、「バットマン VS スーパーマン」と似ているかなあ、と思いました。まあ、やっぱりそうなるよね。BVSが「母親」というキーワードで危機を乗り切ったことに対して、こちらはトニーの両親の死の真相がよりいっそう危機を招くという構図も興味深いです。トニーとスティーブ、バッキーの三者の思惑を丁寧に積み重ねた構成、そしてなによりトニー役ロバート・ダウニー・JRの、目の演技がすごく良かった。そのそれぞれの感情が続くアクションに見事に反映されているんですよね。仇を討ちたいトニー、親友を守りたいスティーブ、罪悪を感じながらも身を守るしかないバッキー。スポーツのように勝つための戦いではなく、己の意思を通すためだけの戦い。大きな力を持つ個人たちによる、最小の戦争の図だと思うんですよね。