スタートボタンを押してください


スタートボタンを押してください (ゲームSF傑作選) (創元SF文庫)

スタートボタンを押してください (ゲームSF傑作選) (創元SF文庫)


短編集「スタートボタンを押してください」を読みました。タイトルからも分かる通り、ゲームを題材にした十二作品が収録されています。元々ゲームは大好きなのでタイトルでぐっときて即買い。ゲームと一口に言ってもたくさんジャンルがあるんですが、海外の作家が多めのこの短編集では、FPS(一人称視点のゲーム)、テキストアドベンチャーネットワークゲーム、とかとかとかが題材みたいです。テキストアドベンチャーは日本ですごく流行ったサウンドノベルぽい感じかなーと思ったら、選択肢がなくて単語を直に打ち込んでいくというもの。「宝箱があります」入力:あける みたいな。これはあんまり日本では見かけないゲームだけどアメリカとか英語圏の方ではかなりブームだったみたいですね。機会があったらちょっとやってみたい。。


ゲームを題材にしたフィクションの楽しさというのは、読みながら(あるいは観ながら)ゲームのリアリティを感じるところにあると思うんですよね。あーこういうのあるある、みたいな。そういう意味で一番良かったのは「キャラクター選択」というお話。旦那さんの留守中にFPSゲームをこっそり遊ぶ奥さん。でも変なしばりプレイ(制約を付けてゲームをプレイすること)で。。という奥さんの思惑がちょっとしたミステリー仕立てなのと、ゲームプレイの描写がすごくFPSぽい感じですごく面白かったですね。外野の旦那が程よくウザいのもいい(笑)それと冴えない女の子がネトゲRMT(リアル・マネー・トレーディング、ゲーム内のアイテムなどを現実の貨幣で売買すること。大抵のゲームでは違反のはず)をしてしまう、「アンダのゲーム」。有名なSFの「エンダーのゲーム」のオマージュでもありながら、もうちょっと現実寄りの問題を扱ってる感じですね。そういう視点とは別に、作品の中で最強のレアアイテムを手に入れてしまったアンダとパートナーが、急にゲームがつまらなくなってしまうっていうリアリティがすごく良かったんですよ。みんな毎日せっせとログインしてレベル上げたりアイテム手に入れたりしてるのは強くなりたいから。他の人より強くなって勝ちたいからだと思うんですよね。その熱い戦いへの渇望に気がつくシーンがぐっときた。ああこの子たち、ほんとにゲーム好きなんだなーって。たまにオンラインで対戦ゲームをしたりするけど、あれもすごくいいマッチは負けてもけっこう楽しい。そりゃ勝てた方がいいんだけど。なんかそういう部分がすごく分かるなあというかんじでした。


なかなかに楽しいアンソロジーだったんだけど、ジャンルがちょっと偏ってたかなあ。格ゲーとかRPGとか、モンハンみたいなやつとか、そうそうステルスゲームも!題材にした短編も読みたいなあ。わがままかなあ。