「オールド・ボーイ」



小島監督の映画評に触発されて。
パク・チャヌク監督作品は前に「親切なクムジャさん」を観てました。
暴力や性の表現がけっこうきつい印象があって、ちょっと敬遠してたんですが、早く観とけば良かった。
すごく面白かったです。


ネタバレ厳禁の映画なのでストーリーにはあまり触れませんが、
復讐ものということで、その描き方がすごく良かったです。
こういうのって、復讐へ駆り立てる動機を簡単に観客に理解されてもつまらないし、
かと言って復讐者の内面でしか完結しないような抽象的なものであっても観客は理解出来ないし、
難しいと思うんですね。
それを、観客が解るようにストレートに動機を設定しながら、映像や役者の演技で深く掘りさげていく技術が
すごく巧みで素晴らしかったです。
特に主役のオ・デス(チェ・ミンシクさん)の鬼気迫る演技が良くて、
長い監禁で失われた感情の制御の不安定さ、無愛想さと、
暴力を振るう時のどこか安堵しているような笑顔がすごく印象的でした。
冒頭の警察にお世話になってるキャラと、出て来た後のキャラがすごく違ってて、ここもかなり驚きましたね。
というか、こういう渋いおっさんが本当に好きだなーと改めて自覚しました(笑)
彼の囁くような独り言にすごく色気があって、とても素敵でしたねえ。
映像の表現も挑戦的で、画面を2つに分けながら内と外の状況を同時に見せたり、
かと思えば、役者の演技をじっくり見せる余裕もあったりして、良かったです。
冒頭の拉致のシーンは特別な技術は何も使ってない(ように思える)のに、
しっかりと異常な事が起きたという風に思わせる鮮やかなカメラワークに思わず「すごい!」と叫んでしまいました。
それと、パク監督作品の特徴なのか解らないけど、すごく温度の低い「笑い」がいろんなところに見られて、
ちょっと面白かったですね。
美容院を訪れたデスが、すごく深刻な表情をしながらシャワーキャップにケープ姿だったりとか、
観てて「え、ここ笑うとこ?」ってすごく疑問に思ったんですが、どうなんでしょう。


音楽も、映像に合わせたクールな音楽を持ってくるかと思えば、いきなりクラシックを持って来たりと、
凝ってて面白かったです。
それでいて全然流れを壊してないし、それどころか暴力的なシーンに妙にはまってて、
映画の面白さを格段にアップさせてるようにも思いましたね。
親切なクムジャさん」を観た時も思ったけど、激しいシーンにあえて静かな曲を持って来たりとか、
こういうセンスを持ってる監督さんってなかなかいない気がします。


アクションシーンもかなり良くて、小島監督も褒めてた、あの長回しのアクションは
本当に胸が熱くなりました。
こういうアクション、最近じゃ「マッハ!!!」*1くらいしか観れてない気がします。
また、アクションの中に微妙な笑いが入る余裕もあったりして、思ったより痛々しい感じはなく、
思いっきりアクションを堪能出来ました。


でもこれ、一人で観る映画だなあという気がします。うっかりお茶の間で観て、凍り付かないようにご注意下さい(笑)

*1:この前TVで放送してた。