「JSA」

JSA [DVD]

JSA [DVD]



先日に続いて、パク・チャヌク監督作品です。
イ・ヨンエさんも出演してるし。
イムリーな事件が起ってしまったけど。。。


そういえば、誰かがこんなことを言っていた。
物語は境界で起きるって。
男と女、生と死、子どもと大人、過去と未来。
これは国と国の境界を舞台にした物語。
一つの民族が二つの国に分かれてて、お互いに境界線を挟んで睨み合っているっていう状況なんて、
海に囲まれた国の人から見たらそういう感覚がよく分からなかったけど、
お話の視点が国ではなく個人にフォーカスしていたので、無理なく楽しめました。
この物語で語られているのは、個人の事ではあるんだけど、個人にとっての国とは何かって言う事なのかな。
普段あまり考えてないけど、実は祖国があるっていうのはけっこう大事な事で、
自分が何者であるかの拠り所の一つでもある訳で、
それがお互いに深く、どうしようもなく深く根ざしている事が提示されるシーンがあって、
同じ言葉で話してるのに、心の一部はやっぱりそこに属してて、それがどうにもできない物悲しさがすごく印象的でした。
また、捜査官(イ・ヨンエさん)が徹底して部外者なのもなにか象徴的で、
北と南で反発しながらも同じ言葉を話す人達から、同じ言葉を話すのにまったく独立していて
その対象をくっきり際立たせる役目を持っていながら、一方で心の一部がそこに属さない、属せない虚しさみたいなものが
あるような気がしました。


役者では、ソン・ガンホさん演じる北側の兵士がすごく良かったですね。
存在感があって、じっとしている佇まいがこんなに力強い役者さんはそうそういない気がします。
ラストの銃撃戦で雨に打たれながら成り行きを見つめる思い詰めた表情とか、
セリフ以外の表現が本当に豊かな人なんだなあと思いました。
おっさん好きとしてはこのシーンにちょっときゅんとしましたねー(笑)
南側の兵士を演じたイ・ビョンホンさんも石のように硬い表情から一転して感情を爆発させたり、
兵士としての厳しさと少年のような陽気さを併せ持っていたりして、
硬直しがちな展開に柔軟さを与えていたような気がします。
それと、イ・ヨンエさんの柔らかさと強かさを兼ね備えたキャラクターがなかなか印象深くて良かったです。
役割的には徹底して部外者であり、メインの兵士の物語とは独立してしまっていて、
あまりその辺の説明が少ないのが残念でしたが、なにか深い物語を予想させるものが提示されていたりして
興味深かったです。
パク監督の作品としてはいつもの毒がないなあ、という印象ですが、
物語に事実を盛り込んだり、その制約の中で物語(フィクション)を詰めて行く手法がとても上手いなあと思いました。
事実の盛り込み方はちょっと小島監督にも似てるかな(笑)
ドキュメンタリーや写真を挿入するカットとか。
堅苦しそうな映画でちょっと敬遠してたけど、ミステリ要素にワクワクしたりドラマに感動したり面白かったです。